越境がある家は売れる?覚書の前に、まず解消できないかを見ます
塀が隣の土地に少し入っている。屋根の先が境界線を越えて出ている。隣の木の枝が伸びてきて、うちの庭に落ち葉が積もる。給排水管が隣の土地の下を通っている。こうした状態を越境と呼びます。
長く住んできた家や、相続で引き継いだ家では、越境が見つかることがあります。そのときに「越境があるから売れない」と考える必要はございません。ただ、当社は覚書を作って終わりにはいたしません。まず、なくせないかを考えます。
この記事では、売る前に当社が何を見て、どういう順番で片づけているかを書きます。木の枝の切り方は2023年4月に法律が変わりましたので、そこも公式の資料で確かめたうえでまとめました。
売る前に、越境があるかどうかを当社が見ます
越境は、図面の上ではなく現地で分かることがほとんどです。当社は査定のときに、次のところを見ています。
- 塀やフェンスが、どちら側の敷地に建っているか
- 屋根の庇や軒先、雨樋が境界線を越えて出ていないか
- 木の枝と根が、隣の敷地に入っていないか
- 物置やエアコンの室外機、門柱の基礎の位置
- 給排水管の経路(古い家では隣の土地の下を通っていることがあります)
そのうえで、測量図や公図を見て、図面と現地にずれがないかを確認します。図面の読み方は公図の見方|地番・地図に準ずる図面・14条地図の違いに、境界がそもそも分からない場合の進め方は境界が分からない家・土地は売れる?測量する前に知っておきたい売却の進め方に書いています。
越境には「している」と「されている」があります
ひとくちに越境といっても、向きが二つあります。
| している | こちらのものが、隣の土地に出ている状態。売り出すときに、買われる方から扱いをたずねられます |
| されている | 隣のものが、こちらの土地に入っている状態。その分だけ敷地が使えず、建て替えのときに支障になることがあります |
当社はどちらも同じように扱います。こちらが出ているときだけ片づけて、入られているほうは放っておく、ということはいたしません。
実際に見つかるのは、次のようなものです。
| 塀 | ブロック塀が境界線をまたいでいる、または片方の敷地に寄って建っている |
| 屋根 | 庇や軒先が境界線を越えて出ている |
| 雨樋 | 屋根は越えていないが、先についた雨樋だけが越えている |
| 木 | 枝が越えている、または根が越えている |
| 配管 | 給排水管が隣の土地の下を通っている |
| 門柱 | 門柱やフェンスの基礎が越えている |
| 物置 | 物置やエアコンの室外機、カーポートの柱が越えている |
当社は、まず解消できないかを考えます
越境について書かれたものを読むと、「覚書を交わして売買を進める」という説明が並びます。当社の順番は違います。
こちらのものが出ている場合は、可能な限り解消します。枝を切る、雨樋を付け替える、塀を作り直す、物置を動かす。工事で直せるものは、売り出す前に直します。

隣のものがこちらに入っている場合も、同じように進めます。隣の方にお話しして、解消をお願いします。
そのうえで、どうしても解消できないものが残ります。建物の基礎や構造に関わっていて動かせない、相手の建物そのものが越えている、といった場合です。そのときに覚書を取り交わします。
覚書は最初の手段ではございません。解消できなかったものを、次に困らない形にしておくためのものです。
覚書に書くこと
覚書は、越境の事実をお互いに確かめて、これからの扱いを決めておく書面です。入れるのは次の内容です。
| 何が | 越境しているものの種類(塀・屋根・雨樋・木・配管など) |
| どこに | 越境している場所と、どのくらい出ているか。図面と写真を付けます |
| これから | 建て替えや、その部分の工事をするときに解消すること |
| 引き継ぎ | 次に所有される方にも、この内容を引き継いでいただくこと |
| 境界 | 越境を認めることが、境界そのものを動かす意味ではないこと |
最後の行が抜けている書面を見かけます。越境を認めた事実が、そのまま「そこが境界だと認めた」と受け取られてしまうと、話がややこしくなります。
そして「引き継ぎ」の行は必ず入れます。売買のときは、当社がその内容を買主さまにお伝えし、引き継いでいただく形にします。
書類を渡すだけでは、買われる方に伝えたことになりません
越境が分かったとき、当社には買われる方にお伝えする義務があります。根拠のひとつは宅地建物取引業法35条の重要事項説明です。
ただ、それだけではありません。全日本不動産協会の法律相談に、次のような裁判例が紹介されています。
中古の一戸建てを売買した事案で、契約のときには「塀の越境はない」と説明されていました。ところが契約のあとに行った測量で、境界のブロック塀が完全に隣の土地に入り込んでいることが分かります。仲介した会社はその測量図を買主に渡しましたが、越境のことは言いませんでした。
裁判所は、契約のときの説明と実際とが食い違う事態になった以上、買主に説明する義務があったとして、測量図を交付した程度では説明したことにならないと判断しています。
この裁判例で大事なのは、契約のあとに分かった場合でも伝える義務があるとされた点です。当社は、越境が分かった時点で書面に残し、買われる方にお伝えします。
木の枝は、2023年4月から自分で切れる場合があります
木の越境は、枝と根で扱いが違います。民法233条を見ると、根は「境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる」とされていて、以前から自分で切れます。
一方、枝は「その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」だけでした。相手が切ってくれない場合、訴えを起こして判決を得るところまで進む必要があったわけです。
2023年4月1日の民法改正で、次の三つの場合には自分で切り取れるようになりました。
| 1号 | 木の所有者に切除するよう催告したにもかかわらず、相当の期間内に切除しないとき |
| 2号 | 木の所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないとき |
| 3号 | 急迫の事情があるとき |
神戸市のページは、1号の「相当の期間」について「事案によりますが、基本的には2週間程度と考えられます」と案内しています。
ここで気をつけたいことが二つあります。
ひとつは順番です。はじめから内容証明郵便を送るのは、これからも隣どうしで暮らしていくことを考えると、やりにくいところだと思います。まずはお話をしてみて、それでも進まないときに書面、という順番になります。
兵庫県弁護士会は、催告したことを明確にしておくため、口頭で頼むのではなく内容証明郵便などを送っておくよう案内しています。後になって言った、言わないにならないようにするためです。あわせて、大きな木の枝を切るのに2週間で準備するのは難しいなど、事案によって相当とされる期間は変わるとも注意しています。
もうひとつは切る範囲です。たつの市のページには「必要以上に竹木の枝を切りすぎたり、竹木の所有者との思わぬトラブルになる危険性もあります」とあり、事前に弁護士や司法書士に相談するよう案内されています。
なお枝を切るために隣の土地に入ることは、民法209条で認められています。ただし「使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者のために損害が最も少ないものを選ばなければならない」とされ、住まいの中に入るには居住者の承諾が要ります。
切るのにかかった費用について、神戸市のページは「基本的には、木の所有者に請求できると考えられます(民法第703条、第709条)」としています。
隣が空き家で、持ち主が分からないとき
2号の「所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないとき」に当てはまるかどうかは、調べたうえでの話になります。たつの市のページは、調べ方をこう案内しています。
- 現地調査(近隣にお住まいの方や自治会への聴き取り)
- 不動産や立木の登記事項証明書を、法務局の窓口やインターネットで請求(有料)
- 依頼した弁護士や司法書士による公的記録の調査(有料)
ただ、明石市のページが書いているとおり、登記は「更新が行われておらず、亡くなられた方の名義のままであったり、住所が変更されていない場合があります」。謄本の読み方は登記事項証明書(謄本)の見方|表題部・甲区・乙区に何が書いてあるかに、名義が変わっていない場合の手続きは相続登記とは?義務化の期限・費用・手続きと住所・氏名の変更登記も義務化|2026年4月から2年以内に書いています。
市に伝えるという手もあります。明石市は、おおむね1年間使われていない状態であれば、市が現地を確認し、所有者を調べて文書で改善を求めるとしています。ただし「市が文書を送付してから3ヶ月から半年程度は様子を見ていただくようお願いします」と書かれていて、時間はかかります。窓口は都市局建築安全課です。

たつの市のページは、市役所の役割をはっきり書いています。「竹木の越境については、基本的には民事(相隣関係)の問題であるため、市役所で越境した竹木の枝を切り取ることはできません。」そのうえで、空き家からの越境が生活環境に悪影響を及ぼしている場合は所有者を調査して剪定や伐採を促し、改善が見込まれないときは管理不全空家として勧告し、土地の固定資産税の軽減(住宅用地特例)を解除することがある、としています。
神戸市には、越境された側が使える補助があります
神戸市には、隣の空き家から越境されている方が使える補助制度があります。根拠は神戸市空家空地対策の推進に関する条例19条と、これに基づく実施要綱です。
| 使える方 | 対象となる空き家・空き地に隣接する土地の所有者。法人でも申請でき、所得の制限もありません |
| 条件 | 市が所有者を調べた結果、所有者不明であることが判明した等の理由により、法や条例に基づく指導ができないものであること |
| 木の条件 | 隣接する土地の地盤面からの高さが、概ね5メートルを超える立木竹に限ります |
| 補助額 | 対象経費の2分の1、または60万円のいずれか低い額 |
| 順番 | 工事を始める前に申請し、交付決定の通知を受けてから工事の契約を結びます |
| 再申請 | 交付決定の日から5年を経過した日が属する年度の末日までは、再度の申請ができません |
対象になるのは剪定にかかる費用です。要綱の別表には伐採を対象経費とする書き方がありませんので、木を根元から切ってしまう費用まで出るとは考えないでください。
申請には、1か月以内に撮影した現況写真や見積書の写しが要ります。詳しくは神戸市のページでご確認ください。
建物が境界の近くに建っているとき
民法234条には、建物を築造するには境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない、とあります。
同じ条文の2項には、時間の区切りが置かれています。この距離を守らずに建てようとしている人がいれば、隣の土地の所有者は工事を中止させたり、内容を変えさせたりできます。ただし、工事が始まってから1年が過ぎたあとと、建物ができあがったあとは、損害賠償を求めることしかできません。
建ってしまったあとは、どけてもらう話ではなく金銭の話になります。建物そのものが越えている場合に解消が難しいのは、このためでもあります。こうした越境は、覚書で扱うことになります。
越境を確認して、書面に残しておく理由
越境をそのままにしておくと、その部分が相手のものになってしまうのではないか、というご心配をうかがうことがあります。
民法162条は、20年間、所有の意思をもって平穏かつ公然と他人の物を占有した者はその所有権を取得する(占有の開始のときに善意で過失がなかったときは10年間)としています。
ここで効いてくるのが「所有の意思」です。不動産流通推進センターの相談事例では、隣の建物が約1センチ越境していた事案について、隣地の所有者が越境の事実を知っている限り時効は成立しない、と回答されています。越境している側に、そこを自分のものとして使っている意思がないと見られるためです。
越境をお互いに確かめて、書面に残しておくこと自体が、この点の備えになります。当社が現地で越境を見て、覚書を取り交わしているのは、売るためだけではありません。
越境がある家の売り方と、当社の関わり
当社は明石市・加古川市・神戸市西区周辺で、仲介での売買、買取、管理のお預かり、自社所有と、いずれの形でも物件を扱っています。越境がある家も同じです。
越境の扱いは、一つひとつ違います。塀が5センチ出ているのと、隣の建物の基礎が入り込んでいるのとでは、話の進め方が変わります。まず現地を見て、解消できるものと、覚書にするものを分けるところからです。

売り方そのものの選び方は買取と仲介どっちが得?金額・期間・手間で比べる選び方で比べています。隣の土地を買い足して形を整える方法は隣地の買い増しで土地の価値は上がる?費用と進め方に、境界を確定させる測量の費用は確定測量と現況測量は何が違う?費用の目安と、隣の方が分からないときの進め方に書いています。
当社がお手伝いできること
買取の金額と、仲介で売り出す場合の価格の両方をご提示いたします。
- 現地で越境がないかを確認し、図面と現地にずれがないかを見ます
- 解消できるものと、覚書にするものを分けてご説明いたします
- 隣の方とのお話も、当社が間に入って進めます
- 荷物が片付いていなくても大丈夫です。そのまま拝見いたします
- 遠方にお住まいの方は、お電話と写真でご相談いただけます。現地は当社が見に行きます
ご相談の際、次のものがお手元にあると話が早いです。おそろいでなくても構いません。
- 固定資産税の納税通知書
- 建物と土地の登記事項証明書(謄本)、または権利証(登記識別情報)
- 測量図、境界の確認書
- 以前に取り交わした覚書があれば、その書面
- 建築確認の書類(確認済証・検査済証)
荷物が残ったままの家の進め方は荷物が残ったままの家は売れる?残置物の処分費と売り方の選択肢、空き家のまま置いている場合の管理は空き家の管理は何をする?頻度・費用・代行サービスの選び方に書いています。まだ売ると決めていない、査定だけ、という段階のご相談でも構いません。
- 無料査定・売却のご相談フォーム(入力1分)
- お写真を送るだけのLINE相談もお受けしています
ご確認ください
この記事は2026年9月時点の公表資料をもとにしています。補助制度は予算の上限に達すると受付が終了しますので、実際に使えるかどうかは神戸市のページでご確認ください。市や県の取扱いは変わることがあります。個別の事情によって進め方は変わりますので、この記事のとおりになるとは限りません。記事中の画像はイメージです。
よくあるご質問
越境があると売れませんか?
越境があること自体で売れなくなるものではございません。当社は、まず解消できるかどうかを見て、解消できないものは覚書を取り交わす形で進めています。買われる方には、越境の内容を書面でお伝えします。
覚書がないまま何十年も経っています。大丈夫ですか?
年数が経っていることが、覚書を作れない理由になるわけではございません。当社は売り出す前に、越境の場所と範囲を確かめ、隣の方にお話しするところから進めます。相手のあることですので、必ず取り交わせるとまでは申し上げられません。取り交わせた場合は、図面と写真を付けて残しておくと、次に売るときにも引き継げます。
隣の木の枝が伸びてきています。勝手に切っていいですか?
原則は、木の所有者に切ってもらう形です。2023年4月1日の民法改正で、催告したのに相当の期間内に切除しないとき、所有者や所在が分からないとき、急迫の事情があるときの三つに限り、自分で切り取れるようになりました。ただ、はじめから書面を送るのは、これからのお付き合いを考えるとやりにくいところです。まずはお話をしてみて、それでも進まないときに内容証明郵便などで残す、という順番になります。切る範囲でもめることがありますので、切る前に弁護士や司法書士にご相談ください。
隣が空き家で、持ち主が分かりません。
登記事項証明書や現地での聞き取りで調べる方法がありますが、登記が古いままで分からないこともあります。神戸市には、市の調査でも所有者不明で行政の指導ができない場合に、隣接する土地の所有者が剪定する費用の一部(2分の1・上限60万円)を補助する制度があります。高さが概ね5メートルを超える木が対象で、工事を始める前の申請が必要です。
塀がどちらのものか分かりません。
古い塀では、建てた経緯が分からなくなっていることがあります。塀の位置だけで決まるものではございませんので、境界標の有無や測量図と合わせて見ていきます。境界そのものがはっきりしない場合の進め方は境界が分からない家・土地は売れる?測量する前に知っておきたい売却の進め方にまとめています。
越境を隠して売ったらどうなりますか?
越境は、買われる方にお伝えする事柄です。裁判になった例では、測量図を渡しただけでは説明したことにならないと判断されました。契約のあとに分かった場合でも伝える義務がある、ともされています。当社は売り出す前に現地で越境を確認し、分かったことを書面にして買われる方にお伝えします。
「売るかどうか迷っている段階」でも大丈夫です。買取と仲介、どちらで進めた場合の金額も比べられます。他社で断られた物件のご相談も歓迎です。
