不動産の住所変更登記・氏名変更登記が義務化|自分で申請した実体験と手続きの流れ
「相続登記が義務になった」というニュースは、ご存じの方が増えました。引っ越しや結婚などで住所・氏名が変わったときに不動産の登記を変更することも、2026年4月1日から義務になりました。相続登記とはまったく別の手続きで、期限は変更から2年以内。義務化より前の引っ越しで登記を変えていない場合も対象です(この場合は2028年3月末まで)。
当社は、この住所・氏名の変更登記を、自社が所有する複数の不動産について自分たちで申請した経験があります。この記事では、制度の中身と、実際にやってみて分かったことを、法務省・法務局の公式情報に沿って整理します。
住所変更登記・氏名変更登記は、所有者はそのままで登記簿の情報だけを直す手続き

不動産の登記簿には、所有者の住所と氏名(法人なら本店と名称)が記録されています。引っ越し・結婚・社名変更などがあっても、登記簿は自動では書き換わりません。所有者そのものは変わらないまま、登記簿上の住所・氏名を今の正しい情報に直すのが、住所変更登記・氏名変更登記です(正式には「登記名義人住所・氏名変更登記」といいます)。
「別に困っていないから」と放置されがちでしたが、所有者と連絡が取れない土地・建物が全国で問題になったことを背景に、義務化されることになりました。
なぜ義務化されたのか
背景にあるのは、「所有者と連絡が取れない不動産」の問題です。登記簿の住所が古いままだと、行政や近隣の方、買いたい人が所有者に連絡を取れず、災害の復旧や空き家対策、土地の取引が止まってしまいます。こうした所有者不明土地の問題を解消するため、相続登記(2024年4月〜)に続いて、住所・氏名の変更登記も義務化されることになりました。
言い換えると、これは「登記簿を見れば持ち主に連絡が取れる状態を保つ」ための仕組みです。所有者にとっても、登記簿が最新なら売却や相続のときの手続きがスムーズになるという実益があります。
相続登記とは別の手続きで、期限も別です
よく混同されますが、この2つは別の手続きです。
| 住所・氏名変更登記 | 相続登記 | |
|---|---|---|
| 何が変わる? | 所有者は同じ。住所・氏名だけ変更 | 所有者そのものが変わる |
| 義務化の開始 | 2026年4月1日 | 2024年4月1日 |
| 期限 | 変更から2年以内 | 相続を知った日から3年以内 |
| 過料の上限 | 5万円以下の可能性 | 10万円以下の可能性 |
| 主な場面 | 引っ越し・結婚・社名変更・本店移転 | 親や配偶者が亡くなったとき |
相続登記については相続登記とは?義務化の期限・費用・手続きの流れで詳しく解説しています。
義務化の期限と、対象になる人
- 開始日:2026年4月1日
- 期限:住所・氏名(名称)の変更日から2年以内に登記
- 義務化前の変更も対象:2026年4月1日より前の引っ越し等で登記を変えていない場合は、2028年3月末までに登記が必要
- 過料:正当な理由なく義務に違反した場合、5万円以下の過料が科される可能性があります(違反したら直ちに科されるという意味ではありません)
詳細は法務省:住所等変更登記の義務化特設ページで確認できます。
手続きの方法は主に2つ

方法① 自分で変更登記を申請する(従来の方法)
登記申請書を作成し、管轄の法務局に提出する方法です。窓口への持参・郵送・オンラインのいずれでも申請できます。個人の住所変更の場合の主な準備は、登記申請書、住民票の写し(マイナンバーの記載がないもの)、登録免許税分の収入印紙です。登録免許税は「不動産1個につき1,000円」です。土地だけなら1,000円、土地1筆+建物1棟なら合わせて2,000円というように、不動産の個数分かかります(法務省民事局:住所変更登記の手続案内(PDF))。法人の場合は必要書類が異なるため、様式とあわせて公式ページで確認してください。
- 申請書の様式・記載例:法務局:不動産登記の申請書様式について
- 手続き全体の案内:法務局:登記されている住所・氏名に変更があった方へ
個人の方が自分で申請する流れ(住所変更の場合)
- 登記簿上の住所を確認:登記事項証明書や権利証で、登記簿に記録されている住所を確認します
- 住所のつながりを証明する書類を取得:引っ越しが1回で、住民票に前住所(登記簿上の住所)が載っていれば、住民票の写しで証明できます。複数回引っ越している場合は、住所の履歴がまとめて記録されている戸籍の附票を本籍地の市区町村で取得します(マイナンバーの記載がないもの)
- 申請書を作成:様式と記載例は法務局:不動産登記の申請書様式についてのページの「1 名義人の住所・氏名の変更」にあります。住所移転は1-1、氏名変更は1-3、住所と氏名の両方は1-4、会社の商号・本店変更は1-5の様式を使います
- 登録免許税分の収入印紙を用意して、管轄の法務局へ提出:窓口持参・郵送・オンラインが選べます。郵送の場合は、封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と書いて書留郵便で送付します(公式の案内で指定されています)
- 登記完了:完了証を受け取って終了です
方法② スマート変更登記を利用する(2026年4月開始・無料)
義務化とセットで始まった新しい仕組みが「スマート変更登記」です。かんたん・無料の手続き(検索用情報の申出)をしておくと、その後の住所・氏名の変更は法務局側が確認して変更登記をしてくれるようになります。「引っ越すたびに自分で申請」が不要になる、義務化時代の本命の仕組みです。利用方法は法務省:スマート変更登記のご利用方法で公開されています。
これから対応する方は、まずスマート変更登記を確認するのがおすすめです。一方、「すでに変更から時間が経っていて、期限内に登記簿を直したい」という場合は、方法①での申請を検討することになります。
個人と法人で仕組みが違います
スマート変更登記を使うための準備は、個人と法人で異なります。
- 個人:「検索用情報の申出」というかんたん・無料の手続きをしておくと、その後の引っ越しなどの際に、法務局が変更の事実を確認し、本人の了解を得たうえで職権で変更登記をしてくれます。申出はオンラインでも書面でもできます
- 法人:会社法人等番号が不動産の登記簿に記録されていることが条件になります。会社の登記(商業登記)で本店や商号の変更をすると、法務局がそれを確認して不動産側の登記も職権で変更する仕組みです
当社が申請したときはこの仕組みの開始前だったため、従来どおり自分たちで変更登記を行いましたが、これからは法人も個人も、この連携を整えておくことで「変更のたびに申請」から解放されます。細かな条件(海外居住者の扱いなど)は法務省の公式ページで確認してください。
実際に自分たちで申請した流れ

当社は本店移転などに伴い、所有する複数の不動産について、登記簿上の名称・住所の変更登記を自分たちで申請しました。そのときの流れです。
- 登記簿上の情報を確認:対象の不動産の登記事項証明書で、登記簿に記録されている名称・住所を確認しました
- 必要書類を準備:法務局の案内に沿って、変更登記に必要な書類を揃えました(必要書類は個人か法人か、何が変わったかで異なります。上の公式ページで確認してください)
- 申請書を作成:法務局の様式・記載例をもとに作成しました
- 郵送で提出:管轄の法務局へ郵送で申請しました。公式の案内では、申請書を入れた封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載して書留郵便で送付し、登記完了証の郵送返却を希望する場合は宛名を書いた返信用封筒と書留郵便分の切手を同封するとされています(法務局:申請書様式ページの注意事項)
- 補正なしで完了:書き直しや追加書類を求められることなく、登記が完了しました
自分でやって分かったこと
- 費用は登録免許税だけで済む:かかるのは「不動産1個につき1,000円」の登録免許税のみです(例:土地と建物の2個なら2,000円)。専門家に依頼した場合にかかる報酬分が不要になるのが、自分でやる一番のメリットです
- 手間は「思ったほどではない」:書類集めと申請書の作成に多少の手間はかかりますが、法務局の記載例に沿って進めれば、当社の場合は補正もなく完了しました
- 複数の物件もまとめて進められる:所有物件が複数ある場合も、対象を整理して申請すれば一度に対応できます(登録免許税は物件の個数分かかります)
- 売却の前に確認しておくと安心:不動産を売るとき、登記簿上の住所・氏名が現在と違うと、売却の登記の前に変更登記が必要になります。売却を考え始めた段階で登記簿を確認しておくと、あとで慌てません
売却のとき、登記簿の住所が古いとどうなる?
不動産の仕事をしている立場から、これだけはお伝えしたいポイントです。登記簿上の住所・氏名が今と違うままだと、その不動産は「売る手続きの手前」で一段階増えます。
売買で買主に所有権を移す登記をするには、その前提として、売主の登記簿上の住所・氏名が現在の情報と一致している必要があります。つまり古いままの場合、売却の登記の前に変更登記を済ませることになり、その分の書類集めと時間が引き渡しまでの日程に乗ってきます。引っ越しを繰り返していて住所のつながりの証明に手間取るケースでは、ここが思わぬ足止めになることがあります。
逆に言えば、登記簿さえ最新にしておけば、この足止めはゼロにできます。「いつか売るかもしれない」不動産こそ、義務化を機に登記簿を確認しておく価値があります。当社に売却をご相談いただく場合も、登記簿の確認からご一緒しますので、「住所が古いままかも」という状態のままで大丈夫です。
専門家へ確認した方がよいケース
すべての方に「自分でできます」とは言えません。次のような場合は、管轄の法務局や司法書士に確認しながら進めることをおすすめします。
- 引っ越しの回数が多く、戸籍の附票でも古い住所の記録が確認できない(附票の保存期間の関係で、昔の履歴が残っていない場合があります)
- 法人所有で、登記の内容が複雑
- 売却や相続登記など、別の登記も同時に必要
- 申請書の作成や、万一の補正対応に不安がある
よくあるご質問
Q. 相続登記とは何が違うのですか?
A. 相続登記は所有者そのものが変わる登記、住所・氏名変更登記は所有者は同じまま登記簿の情報を直す登記です。義務化の開始日も期限も別です。
Q. 何年も前に引っ越しましたが、登記はそのままです。対象になりますか?
A. なります。2026年4月1日より前の変更で未登記の場合は、2028年3月末までに登記が必要とされています。
Q. 自分で申請できますか?
A. できる場合があります。当社も自社の不動産について自分たちで申請しました。ただし住所のつながりの証明が難しい場合など、状況によっては専門家への確認をおすすめします。
Q. スマート変更登記を使えば、何もしなくてよいのですか?
A. 事前の「かんたん・無料の手続き(検索用情報の申出)」が必要です。それをしておくと、以後の変更は法務局側で登記されます。仕組みの詳細は法務省の公式ページをご確認ください。
Q. 氏名変更と住所変更を同時に申請できますか?
A. できます。両方の変更をまとめて申請する様式(法務局の様式1-4)が用意されています。登録免許税は不動産1個につき1,000円です。
Q. 不動産を売る直前でも手続きできますか?
A. できますが、売却の登記の前提として変更登記が必要になるため、段取りに時間の余裕を持つのが安全です。売却を考え始めた段階で、登記簿上の住所・氏名を確認しておくことをおすすめします。
まとめ:まず登記簿の確認から
やることはシンプルです。まず、お手持ちの不動産の登記簿上の住所・氏名が今と合っているかを確認する。違っていれば、スマート変更登記か自分での申請かを選んで、期限内に対応する。迷う点があれば、管轄の法務局や司法書士に確認する。この順番で進めてください。
売却をお考えの物件で「登記簿の住所が古いままかもしれない」という場合は、売却のご相談とあわせて登記簿の確認からご一緒します。売却にかかる費用の全体像は家を売るときにかかる費用の一覧をどうぞ。
※本記事は、法務省・法務局の公開情報と、当社が自社所有不動産について行った申請経験をもとに、制度の概要をまとめたものです。登記申請の代理は司法書士等の業務であり、当社が代行することはできません。個別の登記手続きについては、管轄法務局または司法書士へご確認ください(制度確認日:2026年7月12日)。
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