私道に面した家は売れる?通行・掘削承諾と売却の進め方【明石市・加古川市】
「前の道、公道じゃなくて私道ですね」。査定や相談の場でこう言われて、初めて自分の家の前の道が誰かの持ち物だと知る方は少なくありません。そして調べ始めると出てくるのが、「通行承諾」「掘削承諾」という聞き慣れない言葉です。
先に結論をお伝えすると、私道に面した家も、当社でお預かりしています。ただし、「通る権利」と「掘る承諾」という2つの論点を売る前に整理しておくかどうかで、売りやすさが大きく変わります。この記事では、私道とは何か、なぜ売却でつまずきやすいのか、2023年の民法改正で何が変わったのかを、法務省の公式資料をもとに、明石・加古川周辺の目線で整理します。
私道とは?「道路の種類」と「道の持ち主」は別の話
私道とは、国や市町村ではなく個人や会社が所有している道のことです。昔の分譲地や旗竿地の奥まった区画では、家の前の道が「お隣さんたち数人の共有」や「分譲した会社の名義のまま」ということがよくあります。
ここで混同しやすいのが、建築基準法の「道路」との関係です。私道でも、位置指定道路(42条1項5号)や2項道路として認められていれば、建築基準法上は立派な「道路」であり、接道義務を満たして建て替えもできます(建築基準法(e-Gov法令検索))。つまり、次のとおりです。
| 観点 | 見ているもの | 問題になること |
|---|---|---|
| 道路の種類(公法) | 建築基準法上の道路かどうか | 建て替えできるか(再建築不可やセットバックの話) |
| 道の持ち主(私法) | その道の土地を誰が所有しているか | 通ってよいか・掘ってよいか(今回の話) |
「建て替えできる道なのに、所有関係の整理がついていなくて売りにくい」。私道物件のつまずきは、ほとんどがこの私法側で起きます。
なお、細い道がすべて私道というわけではありません。公図で地番が入っていない細長い土地は里道(赤道)で、持ち主は国や市町村です。個人の持ち物ではありませんので、通行や工事の相談先も変わります。
公図の上で「道」と書かれていても、地番が入っていて持ち主がいることがあります。図面の読み方は公図の見方をご覧ください。
なぜ私道に面した家は「売りにくい」と言われるのか
①「通る権利」がはっきりしないと、買主が不安になる
私道はあくまで他人の土地です。自分がその私道の共有持分を持っていれば通行の根拠は明快ですが、持分がない場合、「今までずっと通れていたから大丈夫」という事実上の状態だけでは、買主も住宅ローンの金融機関も安心できません。
②「掘る承諾」がないと、水道・ガスの工事ができないことがある
買主が建て替えやリフォームで給排水管・ガス管を引き直すとき、私道を掘る必要があります。私道の下を掘るには所有者の承諾(掘削承諾)を求められるのが実務の慣行で、これが取れるかどうかが売買の成否に直結してきました。
③維持管理の負担・ご近所関係が読めない
舗装の補修は誰の費用でやるのか、共有者の一人と連絡が取れない場合はどうするのか。私道は「みんなの道」なので、この取り決めがあいまいだと買主は慎重になります。所有者が分からなくなった私道の補修などについては、法務省が「所有者不明私道への対応ガイドライン」を公表しているほど、全国的にも典型的な悩みです。

「通る権利」の整理:あなたの家はどのパターン?
| パターン | 通行の根拠 | 売却時の考え方 |
|---|---|---|
| 私道の共有持分を持っている | 共有者として使用できる | いちばん明快。持分も家とセットで売る |
| 通行地役権などの設定がある | 登記された権利 | 登記があれば買主にも引き継がれ、説明しやすい |
| 承諾書・覚書がある | 私道所有者との合意 | 次の所有者(買主)にも有効か、内容の確認が必要 |
| 何もない(事実上通っているだけ) | — | 売る前に承諾書の取得を検討。公道に出られない土地には、他の土地を通行できる権利(民法210条)が法律上ある |
袋地(公道に接していない土地)の場合、民法210条により「公道に至るための他の土地の通行権」が法律上認められています(民法(e-Gov法令検索))。ただし通る場所や方法には制限があり、車の通行まで認められるかは事情によります。「法律上の最低限の権利」と「買主が安心して買える状態」は別物なので、売却では書面での整理を目指すのが基本です。
なお、持分をお持ちの場合の注意点をひとつ。売買のときには、私道部分の持分も家とセットで売買・登記することを忘れないでください。私道部分は固定資産税が非課税になっていることも多く、税金の通知書に出てこないため、存在自体が見落とされがちです。家だけ売って私道持分が手元に残ると、次の所有者が同じ通行・掘削の問題で困るうえ、ご自身にも共有者としての立場だけが残り続けます。

「掘る承諾」と2023年の民法改正で変わったこと
掘削承諾の世界では、大きな法改正がありました。2023年(令和5年)4月施行の改正民法で、「ライフラインの設備設置権・設備使用権」が明文化されたのです(民法213条の2)。
法務省の解説によると、電気・ガス・水道などの供給を受けられない土地の所有者は、他人の土地に設備を設置する権利、他人の設備を使用する権利を持つことが条文上はっきりしました。あわせて、あらかじめ目的・場所・方法を土地や設備の所有者に通知すること(相手が準備できる合理的な期間として2週間〜1か月程度)、損害への償金や費用負担のルールも定められています(法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目」)。
つまり、「私道の所有者が誰か分からない」「連絡がつかない」という理由だけでライフラインを引けない、という八方ふさがりは、法律の上では解消に向かいました。
ただし、実務では今も承諾書が重視されます。権利があることと、工事がスムーズに進むことは別で、水道業者や買主・金融機関は引き続き書面の承諾を求めることが多いです。改正は「最後の拠りどころができた」という安心材料と捉えて、売却の場面では従来どおり、承諾書を整える方向で準備するのが現実的です。
売る前に確認しておきたいこと
| 確認すること | どこで・どうやって |
|---|---|
| 私道の所有者・持分の有無 | 法務局で私道部分の登記事項証明書を取得(地番を調べて申請) |
| 建築基準法上の道路種別 | 市の建築担当窓口(位置指定道路か・2項道路かでセットバックの要否も分かる) |
| 通行・掘削の承諾書や覚書の有無 | 購入時の書類一式・仲介した会社の記録を確認 |
| 私道と敷地の境界 | 境界標や測量図の確認(あいまいなら境界が分からない場合の記事へ) |
| 舗装・補修の取り決め | 共有者間の慣行や自治会での申し合わせがないか |
ぜんぶをご自身で調べる必要はありません。登記の調査や市への確認は、不動産会社が代行・同行できます。
私道が狭くて車が入らない場合の売り方については、車が入らない家の記事もあわせてご覧ください。
現実的な売り方
承諾を整えて、仲介で売る
私道所有者から通行・掘削の承諾書をいただき、権利関係を整理したうえで売り出す方法です。書面がそろえば、買主は一般の方でも十分検討でき、価格も通常の相場に近づけやすくなります。所有者への挨拶やお願いの進め方は、経験のある不動産会社と一緒に進めるのが安心です(なお、承諾をめぐって対立が生じてしまった場合の交渉や法的手続きは、弁護士の領域になります)。
承諾が難しければ、買取で売る
「所有者と連絡が取れない」「時間をかけたくない」という場合は、私道物件の扱いに慣れた不動産会社の買取という選択肢があります。承諾の整理を買取後に会社側で進める前提のため、現状のままでも話を進めやすいのが特徴です。違いは買取と仲介の違いで整理しています。
NextHomeにできること
NextHomeは、明石市・加古川市周辺で訳あり不動産の売却相談を専門にしています。私道に面した家のご相談では、登記の調査で持分と所有者を確認するところから、承諾書の整理、買取と仲介の比較までを一緒に進めます。「そもそもうちの前の道が私道なのか分からない」という段階でも大丈夫です。写真だけでもお気軽にご相談ください。
相談の前に、用意しておくと良いもの
お手元にあると話が早いのは、次のようなものです。固定資産税の通知書(私道部分が載っていることがあります)、登記に関する書類、購入時の契約書類一式(承諾書や覚書が挟まっていることが多いです)、前面道路の写真。全部そろっていなくても大丈夫です。まずはお手元にあるものだけご用意ください。
ご確認ください
本記事は、私道に面した不動産の売却について制度の概要をまとめたものです。通行・掘削の権利関係や民法改正の適用は、個々の事情によって扱いが変わります。権利関係の争いに関する判断・交渉は弁護士など専門家の領域です。実際に進める際は、公式情報や専門家への確認をあわせてご検討ください。断定的な保証をするものではありません。
よくある質問
私道に面した家は、公道の家より安くなりますか?
権利関係の整理状況によります。持分や承諾書がそろっていれば、影響は小さく抑えられます。逆に何も整理されていない状態では、その分を差し引いた評価になりがちです。まず現状の確認からがおすすめです。
私道の持分がありません。売れますか?
持分がない家も、当社でお預かりしています。承諾書の取得や、場合によっては持分の一部を譲ってもらう交渉など、整理の方法はいくつかあります。整理が難しい場合は当社の買取という方法もあります。
掘削承諾は必ず必要ですか?
2023年の民法改正で、ライフラインの設備設置権が法律上明文化されました。ただし実務では、工事や売買を円滑に進めるために承諾書を求められることが多いです。売却では承諾書を整える前提で準備するのが現実的です。
私道の所有者と連絡が取れません。どうすれば?
登記事項証明書で所有者を確認するのが第一歩です。所有者が分からない私道への対応は法務省のガイドラインも公表されており、改正民法の通知の仕組みなど打つ手はあります。状況に応じた進め方をご提案しますので、まずはご相談ください。
承諾書には何を書いてもらうのですか?
多くの場合、通行(人・車)と、給排水管などの埋設・掘削を認めること、そしてその効力が将来の買主(承継人)にも及ぶこと、といった内容です。個別の文言は物件の状況によるため、作成時にご案内します。
「はんこ代」を求められることがあると聞きました。
承諾の際に金銭を求められるケースは実際にあります。金額や応じるかどうかは状況によって判断が分かれるところで、一律の正解はありません。無理のない範囲での話し合いを前提に、進め方を一緒に考えますのでご相談ください。
「売るかどうか迷っている段階」でも大丈夫です。買取と仲介、どちらで進めた場合の金額も比べられます。他社で断られた物件のご相談も歓迎です。
