敷地に里道や水路がある土地は売れる?赤道・青道の払い下げと占用許可
測量をしてみたら、敷地の中に細長い土地が通っていた。登記簿を取り寄せると、そこだけ所有者が市や国になっている——里道や水路が敷地にかかっている土地では、こういうことが起こります。
当社でも、用悪水路が敷地にかかっている物件をお預かりしたことがあります。ここでは、里道や水路が敷地にかかっている土地について、売るときに何が問題になるのか、どう進めるのかをお話しします。
里道・水路は「法定外公共物」と呼ばれます
道路法が適用される国道・県道・市道、河川法が適用される河川。これらに当てはまらない、昔から地域で使われてきた小さな道や水路を法定外公共物といいます。里道は「りどう」と読みます。「赤道(あかみち)」「赤線(あかせん)」、水路は「青道(あおみち)」「青線(あおせん)」とも呼ばれます。明治の地租改正で作られた図面で、官有地のうち道が赤、水路が青で表示されたことに由来する呼び方です。
里道や水路の多くは地番が付いていません。地番がないということは登記もされていませんので、法務局で登記事項証明書を取っても出てきません。用途廃止をして払い下げを受けるときに、あらためて地番が付けられます。
では、どこで分かるのか。法務局で取れる公図——正式には「地図に準ずる図面」といいます——を見ると、地番のない細長い土地として表れます。今の公図では、地番の代わりに「道」「水」と記載されています。
赤や青に塗られているのは、和紙やマイラー(フィルム)に描かれた古い公図です。今のものは電子化されていて、着色はされていません。この図面の成り立ちについては、いずれ別の記事でお話しします。
いっぽうで、地番が付いていて登記されている水路や道もあります。かつて赤線・青線だったものが払い下げで登記されたとき、あるいはもともと登記されているときです。この場合は地目が付きます。地目は「用悪水路」だけではなく、不動産登記規則第99条が定める23種類の中から、水路や道に関わるものだけでも次のように分かれます。
| 地目 | どういう土地か |
|---|---|
| 用悪水路 | かんがい用、または悪水を排せつするための水路 |
| 井溝(せいこう) | 田畑や村落の間にある通水路 |
| ため池 | 耕地のかんがい用に水をためておく池 |
| 堤(つつみ) | 防水のために築かれた堤防 |
| 池沼(ちしょう) | かんがい用水ではない水の貯留池 |
| 公衆用道路 | 一般の通行に使われている道路。道路法の道路かどうかは問わない。※所有者を問わないため、個人名義の私道でもこの地目が使われます |
| 雑種地 | ほかのどの地目にも当てはまらない土地 |
それぞれの定義は、法務局の事務の取り扱いを定めた不動産登記事務取扱手続準則第68条によります。田畑の間の通水路なら井溝、堤防だった部分なら堤というように、その土地の成り立ちによって地目が変わります。当社がお預かりした物件では、用悪水路として登記されているものがありました。
ここで気をつけたいのは、地番のない赤線・青線と、地番があって登記されている土地は、別のものだということです。地目が付いているということは、その土地が登記されているということ。所有者の欄を見れば、国や市町村なのか、個人なのかが分かります。この見分けが、進め方を決める最初の分かれ道になります。
もともとは国が持っていましたが、平成17年3月末までに、機能を持っているものは市町村へ引き継がれました。機能を失って公共の用途に使われていないものは、引き続き国(財務局)が管理しています。どちらが持っているかで、話をする窓口が変わります。
| 状態 | 窓口 |
|---|---|
| 今も道や水路として機能している | 市町村。加古川市の水路は治水対策課、明石市は道路と水路・農道で担当課が分かれます |
| 機能を失っている(旧里道・旧水路) | 国。近畿財務局が窓口になります |
どちらに当たるかは、公図と現地、役所の台帳を照らし合わせて確かめます。

そもそも公図に何が書いてあるのか、地番の入っていない土地をどう見分けるのかは、公図の見方でまとめています。「赤道」「青道」という呼び名の由来も、そちらで説明しています。
売るときに問題になるのは、この3つです
| 起きること | 内容 |
|---|---|
| 面積が思っていたより小さい | 敷地だと思って使っていた部分に里道・水路が含まれていると、売れる土地の面積はその分だけ減る |
| 占用の許可が要る | 水路にふたをして出入りしている、橋をかけている——こうした使い方には市の許可が必要。無許可のまま何十年も使っていることがある |
| 建て替えのときに引っかかる | 里道が敷地を分断していると、建物を建てられる範囲が変わることがある |
面積の話は、境界が分からない土地の記事でもお話ししています。
建て替えのときの影響は、里道や水路がどこを通っているかによります。敷地の真ん中を横切っていれば、建物を建てられる部分が分断されます。道路との間に水路が挟まっている場合は、橋やふたがないと敷地に出入りできませんので、接道の条件を満たしているかどうかの確認が必要になります。接道については再建築不可の記事、道路の幅が足りない場合はセットバックの記事、そもそも道に接していない土地については無道路地の記事でお話ししています。
水路にふたをして出入りしているなら、占用の許可を確認します
敷地の前に水路があり、そこにグレーチングや橋をかけて出入りしている家があります。これは水路を占用している状態で、市の許可が必要です。
加古川市は「忘れていませんか?水路の占用申請」というお知らせを出しており、出入りのために水路にふたをする場合には許可が必要であること、無許可で占用したり駐車場や物置として使うことはできないことを示しています。占用料は面積に応じてかかりますが、住むために最低限必要なものは減免の対象とされています。
この許可の話は、当社にご相談いただく物件でもよく出てきます。売主さまが「昔からこうだった」とおっしゃる場合、先代のときに許可を取っているのか、そもそも取っていないのかを役所で確認するところから始まります。
所有者が変わるときは、占用の名義も引き継ぎます
許可を受けて占用している土地を売る場合、占用者の名義を買主さまへ引き継ぐ手続きが必要になります。加古川市には占用等地位承継届という様式が用意されています。市町によって呼び方や書式が違いますので、売買の日程が決まった段階で担当課に確認します。

きれいにしてから売る——用途廃止と払い下げ
里道や水路としての役目を終えているものについては、用途を廃止したうえで、その部分を買い取る(払い下げを受ける)ことができる場合があります。敷地が一つにまとまるので、売るときの説明はしやすくなります。
用途廃止が認められる条件
姫路市は、用途廃止の要件として「長年にわたり法定外公共物としての機能を喪失しており、かつ将来においても機能回復の必要がないと認められること」などを挙げています。今も水が流れている水路や、近隣の方が通行に使っている道は、対象になりません。
手続きと費用
国が管理している旧里道・旧水路の場合、近畿財務局が手続きを示しています。市町村で機能がないことを確認したうえで申請し、隣接する土地の所有者と立ち会って境界を決め、土地家屋調査士などが作成した実測図を添えて協議書を取り交わす、という流れです。
費用は物件によって変わりますが、当社がお手伝いした例では、土地家屋調査士への費用が40万円ほどかかりました。これとは別に、土地の買取代金が必要になります。
買取価格の決まり方と、見落としやすい負担
価格については、近畿財務局が「一体利用地内の取引事例価格や相続税評価額などを考慮して、売却価格を算定します」としています。近くの土地の価格をもとに決まる、ということです。金額は物件ごとに違いますので、事前にお伝えできる目安はありません。
もうひとつ、見落としやすい負担があります。近畿財務局は、現に住宅の敷地などとして使っている場合には、売買代金のほかに、使っていた期間の使用料を支払うことになるとしています。長年その部分を敷地の一部として使ってきた土地では、この分も見ておく必要があります。
手続きには時間もかかります。売却の予定が決まっているなら、払い下げを進めるかどうかは早い段階で判断することになります。
今も使われているなら、付け替えという方法があります
水が流れている水路や、近隣の方が通行に使っている里道は、用途廃止の対象になりません。ただ、この場合でも付け替えという方法があります。今の位置にある水路や道を、同じ機能を確保したうえで別の位置へ移すものです。
市町村には付替承認の手続きが用意されています。要件は、従前の施設と新しい施設を比べて、機能の面でも財産の面でも同等以上であること。あわせて、その水路や道を使っている近隣の方や自治会の同意も必要になります。
なお、付け替えに伴う工事が開発行為に当たる場合には、都市計画法の開発許可が別に必要になることがあります。どの手続きが要るかは市町村の担当課との協議で決まりますので、当社が確認いたします。

払い下げをしないまま売る、という選択もあります
用途廃止が認められない場合や、時間をかけられない場合でも、売れないわけではありません。
買主さまの反応は、その部分を後から敷地に取り込める見込みがあるかどうかで変わります。払い下げや付け替えが進められそうな土地であれば、あまり気にされないことが多いです。それが難しい場合でも、状況を分かったうえで購入される方はいらっしゃいます。
当社が買い取る形もあります。仲介で売り出した場合の価格と、買取の金額の両方をお伝えしますので、そのうえでお決めください。売り方の違いは買取と仲介の比較記事にまとめています。
どちらで進めるにせよ、里道・水路がかかっていることは、売り出しの資料と重要事項説明で買主さまにお伝えします。引き渡してから買主さまが知ると、話が難しくなります。契約不適合責任の面でも、分かっていることは先に書いておきます。
「うちの土地」と思っていたら官有地、その逆もあります
ご自宅の敷地だと思って何十年も使ってきた部分が、調べたら市の土地だった——まれにあることです。
そして、その逆もあります。当社が調べた物件で、道のように見えていて誰もが官有地だと思っていた部分が、実は売主さまの所有だったことがありました。近隣の方が通行に使っていたため、誰の土地か気にされていなかったのです。
どちらも、公図と登記簿と現地を突き合わせて初めて分かります。そのときに手がかりになるのが、売主さまのお話です。いつ頃からその形だったのか、近隣の方が通られていたのか、どこかで水が流れていた覚えがあるか——図面だけでは読み取れないことが多いので、覚えておられることを聞かせてください。
当社にできること
公図と登記簿の取り寄せ、現地での確認、市町村や財務局の窓口での照会——ここまでを当社が行います。そのうえで、払い下げを進めてから売るのか、今の状態で売り出すのか、買取で引き受けるのか、それぞれの見通しをお伝えします。
ご相談の際、次のものがお手元にあると、より具体的なお話ができます。おそろいでなくても構いません。
- 登記識別情報または権利証
- 固定資産税の納税通知書
- 過去に測量したことがあれば、そのときの図面
- 市から届いた占用に関する書類(心当たりがあれば)
まだ売ると決めていない、査定だけ、という段階のご相談でも構いません。里道や水路がかかっている土地は一件ごとに事情が違いますので、まず公図を見るところから始めます。
ご確認ください
この記事の記載は執筆時点のものです。用途廃止が認められるかどうか、払い下げを受けられるかどうかは、土地の状況と行政の判断によります。手続きの方法・必要書類・費用・占用料は市町村や財務局によって異なりますので、必ず所管の窓口にご確認ください。記事中の金額は当社がお手伝いした一例で、物件ごとに変わります。記事中の画像はイメージです。
よくあるご質問
敷地の中に里道が通っています。この土地は売れますか?
売れます。里道の部分だけ所有者が違うという状態ですので、その事実を明らかにしたうえで売り出します。買主さまが気にされるのは、その部分を後から敷地に取り込めるかどうかです。用途廃止と払い下げ、あるいは付け替えが進められそうな土地であれば、あまり問題にならないことが多く、難しい場合でも状況を分かったうえで購入される方はいらっしゃいます。
「赤道」「青道」とは何のことですか?
昔の公図で、里道が赤色、水路が青色で着色されていたことに由来する呼び方です。どちらも法定外公共物と呼ばれるもので、登記簿の地目は「公衆用道路」や「用悪水路」となっていることが多く、所有者は国か市町村です。
水路にふたをして車を停めています。何か手続きが要りますか?
水路の占用にあたりますので、市の許可が必要です。加古川市は、出入りのために水路へふたをする場合に許可が要ること、無許可での占用や駐車場・物置としての使用はできないことを示しています。占用料は面積に応じてかかり、住むために最低限必要なものは減免の対象とされています。許可を受けているかどうかは当社が役所で確認いたします。
払い下げにはいくらかかりますか?
土地の買取代金と、測量や手続きの費用がかかります。買取代金は、近畿財務局の場合、一体で使っている土地の取引事例価格や相続税評価額などを考慮して算定するとされており、物件ごとに違います。測量については、当社がお手伝いした例で土地家屋調査士への費用が40万円ほどでした。また、住宅の敷地として使ってきた場合は、使っていた期間の使用料を求められることがあります。
払い下げは、売る前に済ませたほうがいいですか?
一概には言えません。敷地が一つにまとまれば説明はしやすくなりますが、手続きには時間と費用がかかり、用途廃止が認められないこともあります。売却の予定と、その土地を探している方の顔ぶれを見たうえで判断することになりますので、費用をかける前にご相談ください。
里道や水路がかかっていると、値段は下がりますか?
使える面積が減る分は価格に反映されます。ただ、里道や水路がかかっていること自体で大きく下がるとは限らず、後から敷地に取り込める見込みがあるかどうかで買主さまの見方が変わります。査定のときに、その部分をどう扱えるかまで含めてご説明いたします。
「売るかどうか迷っている段階」でも大丈夫です。買取と仲介、どちらで進めた場合の金額も比べられます。他社で断られた物件のご相談も歓迎です。
