増築した家は売れる?建築確認・検査済証がない場合と「既存不適格」
実家を売ろうと図面を探したら、建てたときの書類は出てきたのに、あとから建て足した部屋の分が見当たらない。あるいは、登記簿に載っている床面積と、今の家の広さが合わない。増築のある家では、よくある話です。
当社にご相談いただく古い家でも、増築されているものは珍しくありません。ここでは、増築した部分の書類がそろっていない家について、何がどう問題になるのか、書類がそろっていない状態で売れるのかをお話しします。
増築のある家では、3つの「ずれ」が出てきます
増築といっても、いろいろな形があります。平屋に部屋を継ぎ足した、離れを建てた、2階を乗せた、車庫や物置を建てた、縁側をサンルームにした——当社にご相談いただく家では、こうした増築がひととおり出てきます。そしてどれも、手続きをしないまま今に至っている例が少なくありません。
ひとくちに「増築の書類がない」と言っても、中身は3つに分かれます。どれが起きているかで、対応が変わります。
| ずれの種類 | どういう状態か |
|---|---|
| 登記のずれ | 増築した部分が登記簿に反映されていない。登記簿の床面積が今より小さい |
| 建築確認のずれ | 増築のときに建築確認の申請をしていない。役所に増築の記録が残っていない |
| 検査済証がない | 建築確認は受けたが、工事が終わったあとの完了検査を受けていない |
このうち登記のずれについては、未登記の建物がある家の記事で手続きと費用をお話ししています。ここから先は、建築確認と検査済証——役所側の記録の話です。

「違法建築」と「既存不適格」は、意味が違います
増築した家の相談で、いちばん誤解されているのがここです。今の基準に合っていない家が、すべて違法というわけではありません。
建築基準法は改正を重ねてきました。建てた当時の基準では適法だったのに、その後の改正で今の基準に合わなくなった建物があります。これを既存不適格といいます。建築基準法第3条第2項で、こうした建物には改正後の規定を適用しないと定められています。
一方、建てた当時から基準に反していたものは違反建築です。増築のときに建築確認を受けていない、確認を受けた内容と違うものを建てた、という場合がこちらに当たります。
当社では、建築確認を受けて当時適法に増築された部分については、既存不適格として買主さまにご説明しています。書類が残っているかどうかで、説明できる内容が変わります。増築のときの確認済証が見つかった場合は、必ずお持ちください。
検査済証がない家は、古い建物では多数派でした
「検査済証がありません」と言われて不安になる方がいらっしゃいますが、古い家では、これは特別なことではありません。
国土交通省の資料によると、完了検査率は平成10年で約4割、平成28年で約9割とされています。平成10年以前は4割を下回っていました。つまり、その頃までに建った家は、半分以上が完了検査を受けていない計算になります。
変わったきっかけは、平成10年の建築基準法改正です。それまで役所の建築主事だけが行っていた確認と検査を、民間の指定確認検査機関でもできるようにしたもので、この制度は平成11年5月から始まりました。検査を受けられる窓口が増えたことで、実施率が上がっていきました。
当社がお預かりする物件でも、平成の初め頃までに建った家では検査済証が見当たらないことが多く、そのあとに建った家ではそろっているものがほとんどです。年代による差は、この統計のとおりです。
検査済証がない建物を調べる方法もあります
買主さまが増築や大規模なリフォームを考えている場合、検査済証がないと手続きが進みにくくなります。この場合、指定確認検査機関などに依頼して、今の建物が建築基準法の規定に合っているかを調べてもらう方法があります。
国土交通省がこの調査の進め方を示しており、令和7年(2025年)4月1日から「既存建築物の現況調査ガイドライン」に一本化されました。それまでの「検査済証のない建築物に係る…ガイドライン」は、こちらに統合されています。費用と日数がかかりますので、必要かどうかは買主さまの目的しだいです。

建ぺい率・容積率がオーバーしていると、買主さまの住宅ローンに影響します
増築を重ねた結果、その土地に建てられる面積を超えてしまっている家があります。この状態は、買主さまが住宅ローンを使うときに関係してきます。
金融機関によって扱いは違い、この種の物件でも取り扱ってくれるところはあります。ただ、どの金融機関がどう判断するかは、物件の内容と買主さまの状況によりますので、当社から「必ず通ります」とは申し上げられません。売り出しの前に、想定される買主さまの層と資金の組み方を含めて、進め方をご相談させていただきます。
なお、面積のオーバーがあると、住宅ローンを使う買主さまの候補は狭くなります。現金でご購入される方もいらっしゃいますし、当社が直接買い取る形もございます。売り方の選び方は買取と仲介の比較記事でお話ししています。
増築した家で、当社が現地で見るところ
増築のある家で当社が必ず見るのが、もとの建物と増築部分の屋根がぶつかっているところです。
屋根と屋根が干渉して無理な形になっている場合、雨仕舞いが難しく、そこから雨漏りが起きやすくなります。増築のときに屋根の形をきれいに納められていれば問題は出にくいのですが、部屋を足すことを優先して、屋根が変則的な形になっている家があります。天井にしみが出ていないか、屋根裏の状態はどうか、雨のあとに壁を見せていただくこともあります。
雨漏りやシロアリなど、建物の傷みが売却にどう影響するかは傾いた家・雨漏りする家の記事にまとめています。

増築した家は、こうして売っています
書類がそろっていない家を、必ず整えてから売らなければならないわけではありません。当社では、次のどちらかで進めることが多くなっています。
| 進め方 | 内容 |
|---|---|
| 現況のまま売り出す | 増築部分の登記は、購入された買主さまが行う形。売主さまの負担は増えない。増築の経緯と現況は、資料と重要事項説明で買主さまにお伝えする |
| 当社が買い取る | 登記は当社で行うことが多い。買主さまを探す期間がなく、片付けや修繕も不要 |
どちらを選ぶかは、増築の内容と、その家を探している方の顔ぶれによって変わります。現地を見てから、買取の金額と、仲介で売り出す場合の価格の両方をお伝えします。今の状態のまま引き渡す現況渡しについても、あわせてご説明いたします。
売り出しの資料や重要事項説明では、増築の有無、確認済証・検査済証の有無、登記との差を記載します。あとから「聞いていない」となることを防ぐためで、契約不適合責任の面でも、分かっていることを書いておくほうが売主さまを守ることになります。
買主さまが大きなリフォームを考えている場合
2025年4月から、木造戸建てでも大規模なリフォームには建築確認の手続きが必要になる場合があります。国土交通省が確認・検査の対象となる建築物の規模を見直したためです。買主さまが購入後に手を入れる予定であれば、この点も含めて情報をお渡しします。
当社にできること
増築の記録が役所に残っているか、確認済証や検査済証が交付されているか、登記簿と現況にどれだけ差があるか——これらは当社が役所と法務局で調べます。売主さまにお調べいただく必要はありません。
ご相談の際、次のものがお手元にあると、より具体的なお話ができます。おそろいでなくても構いません。
- 建てたときの確認済証・検査済証(増築分があればそれも)
- 間取り図や配置図
- 登記識別情報または権利証
- 固定資産税の納税通知書(家屋の課税床面積が分かります)
まだ売ると決めていない、査定だけ、という段階のご相談でも構いません。増築のある家は一軒ごとに事情が違いますので、まず現地を見せていただくところから始めます。
他社に断られた家を当社が買い取るときに、建築確認と登記をどう見ているかは、他社に断られた物件の買取|当社が最初に確かめること・買い取れない2つの場合・金額の考え方に書いています。
ご確認ください
この記事の記載は執筆時点のものです。建築基準法の適用や、増築部分が既存不適格か違反建築かの判断は、建物ごとの条件と行政の判断によります。住宅ローンの可否は金融機関の審査によるもので、当社が結果をお約束できるものではありません。制度の内容は変更される場合がありますので、手続きの前に所管の窓口にご確認ください。記事中の画像はイメージです。
よくあるご質問
検査済証がない家は売れませんか?
売れます。完了検査率は平成10年で約4割とされており、その頃までに建った家では検査済証がないほうが多いくらいです。売買そのものが止まるわけではありません。ただし買主さまが購入後に増築や大規模なリフォームを予定している場合は、手続きが進みにくくなることがありますので、売り出しの前にその点をご説明します。
「既存不適格」と言われました。違法建築ということですか?
違います。既存不適格は、建てた当時の基準では適法だった建物が、その後の法改正で今の基準に合わなくなった状態です。建築基準法第3条第2項で、改正後の規定を適用しないと定められています。建てた当時から基準に反していた違反建築とは扱いが分かれます。
増築した部分の建築確認を、今から受けられますか?
すでに建っている部分について、さかのぼって確認済証が交付されることはありません。建物が今の基準に合っているかを調べる方法として、指定確認検査機関などによる調査があります。国土交通省が「既存建築物の現況調査ガイドライン」で進め方を示しています。費用と日数がかかりますので、必要かどうかは目的によります。
建ぺい率がオーバーしている家でも、住宅ローンは使えますか?
金融機関によって扱いが違い、この種の物件を取り扱うところもあります。ただし審査の結果は金融機関の判断ですので、当社から可否をお約束することはできません。現金で購入される方や買取再販の会社であれば、この点は問題になりません。
増築部分を壊してから売ったほうがいいですか?
先に壊すことはおすすめしていません。増築部分が使える状態なら、その広さを求めている買主さまがいらっしゃいます。解体には費用もかかります。壊すかどうかは、増築の内容と買主さまの層を見てから判断することですので、まず現地を見せていただいてからご相談させてください。
登記簿の床面積と、固定資産税の課税床面積が違います。どちらが正しいのですか?
どちらかが間違っているわけではありません。登記簿は所有者からの申請にもとづくもの、固定資産税は市町村が現地を調査して課税するもので、成り立ちが違います。未登記の増築があると、課税床面積のほうが大きくなることがあります。当社が両方を取り寄せて突き合わせますので、売主さまにご用意いただく必要はありません。
「売るかどうか迷っている段階」でも大丈夫です。買取と仲介、どちらで進めた場合の金額も比べられます。他社で断られた物件のご相談も歓迎です。
