相続人と連絡が取れない実家は売れる?行方不明・音信不通のときの進め方【明石市・加古川市】
親が亡くなり、実家を相続したものの、名義は兄弟姉妹との共有——ところが、そのうちの一人と連絡が取れない。「実家を売りたいのに、話し合いのテーブルにつく相手がいない」。相続の相談を受けていると、こうしたお悩みは少なくありません。
先に結論をお伝えします。相続人の一人と連絡が取れない家でも、法律で定められた手続きを踏めば、売却できる道はあります。ただ、その手続きは家庭裁判所や地方裁判所が関わるもので、弁護士や司法書士といった専門家の力を借りて進めるものです。この記事では、どんな選択肢があるのかを、裁判所の公式情報をもとに、明石・加古川周辺の目線で整理します。
なぜ「連絡が取れない」と売れないのか
実家が兄弟姉妹などの共有名義になっている場合、その不動産を売るには、原則として共有者全員の同意が必要です。一人でも「売る」という意思表示ができない人がいると、売買契約を結べません。これは、共有者を困らせるための決まりではなく、他人が勝手に人の財産を処分できないようにするための、当然のルールです。
だからこそ、連絡が取れない共有者がいると話が止まってしまいます。ただ、法律は「連絡が取れないから永遠に売れない」という結果にならないよう、いくつかの受け皿を用意しています。共有名義そのものの難しさは共有名義の家を売るにはでも整理しています。

まず「どういう状態か」を切り分ける
ひとくちに「連絡が取れない」といっても、状況によって使える手続きが変わります。大きく2つに分けて考えると整理しやすくなります。
| 状態 | 具体例 | 主に検討する手続き |
|---|---|---|
| ①どこにいるか分からない(生きていることは前提) | 音信不通・住所不明・引っ越し先が分からない | 所在等不明共有者の持分取得/不在者財産管理人 |
| ②長期間、生きているか亡くなったかも分からない | 何年も行方不明で生死が確認できない | 失踪宣告 |
「①のつもりだったが、実は何年も生死不明だった」ということもあります。どの手続きが適切かは事情によって変わるため、判断は専門家に相談しながら進めることになります。
パターン①:所在が分からない共有者がいるとき
【2023年の新制度】所在等不明共有者の持分の取得
2023年(令和5年)4月の民法改正で、共有不動産の使いにくさを解消するための新しい制度が始まりました。そのひとつが「所在等不明共有者の持分の取得」です。
裁判所の説明によると、これは共有不動産について、他の共有者を知ることができない、またはその所在を知ることができない場合に、裁判所へ申し立てて、その所在不明の共有者の持分を自分(申立人)が取得するという手続きです(裁判所「所在等不明共有者持分取得申立てについて」)。所在不明の共有者には、持分の時価にあたるお金を受け取る権利(供託金の還付請求権)が保障される仕組みです。申立ては、対象の不動産がある場所を管轄する地方裁判所に行います。
持分を集約して単独の名義にできれば、あとは通常どおり売却を進められます。ただし、大事な条件がひとつあります。相続で生じた共有(遺産共有)の場合は、原則として相続開始から10年以上が経過していることが必要とされています。相続してまだ日が浅いケースでは、この制度をすぐには使えない点に注意が必要です。
不在者財産管理人を選ぶ
もうひとつの方法が、「不在者財産管理人」です。裁判所の説明では、従来の住所を去って容易に戻る見込みのない人(不在者)に財産の管理人がいない場合、家庭裁判所が申立てにより管理人を選任します(裁判所「不在者財産管理人選任」)。
選ばれた管理人は、いわば行方の分からない共有者の「代理人」のような立場で、その人の財産を守り、管理します。そして、家庭裁判所の「権限外行為許可」を得たうえで、遺産分割や不動産の売却を代わりに行うことができます。これにより、連絡が取れない共有者がいても、その持分を含めた売却が可能になります。
| 項目 | 不在者財産管理人選任の概要 |
|---|---|
| 申し立てる人 | 利害関係人(配偶者・相続人・債権者など)または検察官 |
| 申立先 | 不在者の従来の住所地・居所地の家庭裁判所 |
| 費用(申立て) | 収入印紙800円分+連絡用の郵便切手(金額は裁判所により異なる) |
| 予納金 | 不在者の財産の内容によっては、申立人が納める場合がある |
| 不動産の売却 | 家庭裁判所の「権限外行為許可」が必要 |
予納金は、管理人の報酬や管理費用に充てられるお金で、財産の状況によっては数十万円規模を求められることもあります(金額はケースによって大きく異なります)。詳しくは申立先の裁判所や専門家にご確認ください。
パターン②:長期間、生死が分からないとき
失踪宣告
共有者が単に「所在不明」なのではなく、長い間、生きているのか亡くなったのかも分からないという場合には、「失踪宣告」という制度があります。これは、生死不明の人を法律上、死亡したものとみなす手続きです(裁判所「失踪宣告」)。
失踪宣告には2つの種類があります。
| 種類 | 要件 |
|---|---|
| 普通失踪 | 生死が明らかでない状態が7年間続いたとき |
| 危難失踪(特別失踪) | 戦争・船の沈没・震災などの危難に遭遇し、その後1年間生死が明らかでないとき |
失踪宣告によってその共有者が法律上亡くなったものとみなされると、その持分はさらにその人の相続人へと引き継がれます。つまり、失踪宣告は「その人を相続の当事者から外す」のではなく、次の相続を発生させる手続きだという点は、あらかじめ知っておきたいところです。手続きは家庭裁判所に申し立てて行い、申立ては利害関係人ができます。
費用と時間の目安
これらの手続きは、申立てそのものの実費は大きくない一方、結論が出るまでに時間がかかるのが特徴です。裁判所での調査や公告などの手続きを経るためで、月単位から、内容によっては年単位の時間を見ておく必要があります。
| 主な費用(申立て) | 時間の目安 | |
|---|---|---|
| 所在等不明共有者の持分取得 | 収入印紙・予納金など(供託が必要) | 数か月以上 |
| 不在者財産管理人 | 収入印紙800円+郵便切手+予納金 | 数か月〜(売却許可までさらに時間) |
| 失踪宣告 | 収入印紙800円+郵便切手ほか(公告が必要) | 1年前後かかることもある |
※費用・期間はいずれも目安で、裁判所や事案によって変わります。正確な金額・期間は申立先の裁判所や専門家にご確認ください。弁護士・司法書士に依頼する場合は、別途その報酬もかかります。

相続登記をしないまま次の相続が起きると、連絡すべき相手はさらに増えます。この場合の進め方は数次相続の記事でお話ししています。
いちばんの対策は「連絡が取れるうちに動くこと」
ここまで読んでお分かりのとおり、連絡が取れない共有者がいると、売却までの道のりは一気に長く、複雑になります。裏を返せば、連絡が取れる今のうちに、実家をどうするか話し合っておくことが、最大の対策です。
相続した実家を「とりあえず共有のまま」にしておくと、時間の経過とともに次の相続が起きて共有者が増えたり、誰かと連絡が取れなくなったりして、どんどん動かしにくくなります。相続した空き家を売る手順や、まだ手続きが済んでいなければ相続登記の記事もあわせてご覧ください。「今は売らないけれど、いずれは」という段階でも、早めに方向性を共有しておくことをおすすめします。
NextHomeにできること
NextHomeは、明石市・加古川市周辺で、事情のある不動産の売却相談を専門にしています。ここまでご紹介した手続きは、その多くが法律の専門家(弁護士・司法書士)の領域です。当社が裁判所の手続きや共有者との交渉を代わりに行うことはありませんが、「その不動産が今いくらで売れそうか」「どういう売り方が向いているか」という、判断の土台になる情報をご用意することはできます。
手続きを進めるかどうかを決めるにも、「実家がいくらになるのか」が分からなければ判断がつきません。まずは価値の把握から始めて、必要に応じて連携している専門家をご紹介する、という進め方もできます。買取と仲介のどちらが向くかも含めて、状況を一緒に整理します。「うちはどうすればいいんだろう」という段階で大丈夫です。
相談の前に、用意しておくと良いもの
お手元にあると話が早いのは、次のようなものです。固定資産税の通知書、登記に関する書類(登記事項証明書など)、相続関係が分かる資料、実家の場所が分かる地図やメモ。全部そろっていなくても大丈夫です。まずはお手元にあるものだけご用意ください。
ご確認ください
本記事は、相続人と連絡が取れない場合の不動産売却について、一般的な情報をまとめたものです。所在等不明共有者の持分取得、不在者財産管理人の選任、失踪宣告などの手続きの要件・費用・期間は、法律や個々の事情によって異なり、その判断や申立ては弁護士・司法書士などの専門家や裁判所の領域です。実際に進める際は、必ず専門家や裁判所の公式な案内をご確認ください。断定的な保証をするものではありません。
よくある質問
連絡が取れない兄弟がいても、実家を売れますか?
すぐに売れるわけではありませんが、道はあります。所在が分からない場合は「所在等不明共有者の持分取得」や「不在者財産管理人の選任」、長期間生死不明の場合は「失踪宣告」といった手続きを経ることで、売却が可能になることがあります。いずれも裁判所が関わる手続きで、専門家に相談しながら進めます。
勝手に自分の持分だけ売ることはできますか?
共有持分だけを売ること自体は可能な場合がありますが、買い手が限られ、価格も低くなりやすい傾向があります。実家全体をきちんと売りたい場合は、本記事で紹介した手続きを検討することになります。まずは状況の整理からご相談ください。
相続したばかりですが、所在不明の共有者の持分を取得できますか?
相続で生じた共有の場合、「所在等不明共有者の持分の取得」は、原則として相続開始から10年以上が経過していることが必要とされています。相続して間もない場合は、不在者財産管理人など別の方法を検討することになります。具体的な判断は専門家にご確認ください。
手続きにはどのくらい時間がかかりますか?
手続きの種類や事案によって変わりますが、数か月から、失踪宣告のように公告が必要なものでは1年前後かかることもあります。時間がかかるからこそ、早めに動き出すことが大切です。
費用はどのくらいかかりますか?
申立て自体の実費(収入印紙・郵便切手など)は大きくありませんが、不在者財産管理人の予納金や、弁護士・司法書士に依頼する場合の報酬が別にかかります。金額はケースによって幅があるため、裁判所や専門家にご確認ください。
まず何から始めればいいですか?
おすすめは、並行して2つを進めることです。ひとつは、弁護士・司法書士など専門家への相談で、どの手続きが向くかを確認すること。もうひとつは、実家が今いくらで売れそうかを把握することです。当社は後者のお手伝いができます。判断材料がそろうと、次の一歩が決めやすくなります。
「売るかどうか迷っている段階」でも大丈夫です。買取と仲介、どちらで進めた場合の金額も比べられます。他社で断られた物件のご相談も歓迎です。
