数次相続とは?祖父名義のままの実家を売るまでの順番と期限
お盆にご実家へ帰られて、「そろそろこの家をどうするか」という話になった——という方から、この時期はご相談が増えます。そこで登記を取り寄せてみたら、名義がお祖父さまのままだった。しかも、その相続の話し合いをしないうちに、お父さままで亡くなっている。
これが数次相続と呼ばれる状態です。この記事では、数次相続とは何か、なぜ売却の前に片づける必要があるのか、そして当社がどこまでお手伝いして、どこから司法書士にお願いしているのかを、順番にお話しします。
数次相続とは——相続が終わらないうちに、次の相続が起きた状態
数次相続とは、ある人が亡くなって相続が始まったあと、遺産分割や相続登記が済まないうちに、その相続人も亡くなってしまった状態のことをいいます。一次相続・二次相続と重なっていくので「数次」です。
相続が始まると、亡くなった方の財産は民法896条のとおり相続人が引き継ぎます。相続人が複数いれば、民法898条で、遺産はいったん相続人全員の共有になります。この共有の状態のまま誰かが亡くなると、その人が持っていた権利が、さらにその相続人へ引き継がれていきます。
登記を放置していた期間が長いほど、この重なりは増えます。祖父の代の名義のままで20年、30年という家は、明石市・加古川市周辺でも珍しくありません。
「代襲相続」とはどう違う?
よく混同されるのが代襲相続です。違いは、亡くなった順番にあります。
| どういう状態か | |
|---|---|
| 代襲相続 | 相続が始まる前に(または同時に)子が亡くなっている。その子(孫)が代わりに相続人になる |
| 数次相続 | 相続が始まった後で、相続人が亡くなった。その相続人の相続がさらに発生する |
代襲相続については民法887条2項に、「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき」その者の子が代襲して相続人になる、と書かれています。この「以前」が分かれ目です。祖父より先に父が亡くなっていれば代襲相続、祖父が亡くなった後に父が亡くなれば数次相続になります。
順番が違うだけで、誰が相続人になるか・誰の実印が要るかが変わります。ご記憶やご家族の間の認識ではなく、戸籍をさかのぼって確かめる必要があります。この確認は、司法書士に依頼すれば戸籍集めから行ってもらえます。
数次相続の何が大変なのか——関わる人が増える
いちばんの問題は、話し合いに加わる人が増えることです。
たとえば、ここに架空のモデルケースを置いてみます。祖父が亡くなり、相続人は父と叔父の2人でした。ところが登記をしないうちに父が亡くなり、父の相続人として母と子3人が加わります。さらに叔父も亡くなっていれば、叔父の配偶者と子——相談者から見ればいとこ——も相続人です。最初は2人だった話が、気づけば7人、8人になります。
そして、この全員が納得して遺産分割の協議をまとめ、書面に実印を押し、印鑑証明書を出してくれないと、家の名義は動きません。名義が動かなければ、売ることもできません。会ったこともない親族に連絡を取るところから始まる、ということも起こります。
連絡先が分からない・行方が分からない相続人がいる場合の進め方は、相続人と連絡が取れないときの記事でお話ししています。
最初にやること——戸籍で「誰が相続人か」を確定する
話し合いを始める前に、まず相続人が誰なのかを確定させる必要があります。思い当たる親族に声をかける、ではなく、戸籍で確かめる作業です。
集めるのは、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍。結婚や転籍、法律の改正で戸籍は作り替えられているので、一つの役所で全部そろうとは限りません。前の本籍地へ請求して、さらにその前へ、とさかのぼっていきます。数次相続では、これを亡くなった方の人数分行います。祖父の分、父の分、叔父の分、と重なります。
ここで、思ってもみなかった相続人が見つかることもあります。前の結婚のお子さん、認知されたお子さん、養子縁組。「そんな人がいるとは知らなかった」というお話は、実際にあります。だからこそ、記憶ではなく戸籍で確かめます。
集まった戸籍をもとに、誰が相続人で、それぞれどれだけの割合を持っているかを図にしたものが相続関係説明図です。この図ができて初めて、「誰に連絡して、誰の実印をもらう必要があるのか」がはっきりします。当社がご紹介する司法書士に依頼された場合、この戸籍集めから引き受けてもらう形も、ご自身で集めて司法書士に渡す形も、どちらもあります。

2027年3月末という期限があります
もうひとつ、放置していられない事情があります。2024年4月1日から、相続登記の申請が義務になりました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない場合、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。
見落とされがちなのが、義務化より前に起きた相続も対象になる点です。祖父の代から名義がそのままという家も、この義務の対象で、期限は2027年3月31日とされています。何十年も放置されてきた数次相続の家ほど、この期限に直面します。相続登記そのものの手続きや費用は、相続登記の義務化の記事でお話ししています。
「期限までに話し合いがまとまりそうにない」という場合のために、相続人申告登記という制度があります。自分が相続人であることを法務局に申し出ておく手続きで、相続人が単独ででき、登録免許税もかかりません。ただし、これは申請義務を果たすための手続きであって、名義が自分に移るわけではありません。遺産分割がまとまったら、あらためて相続登記が必要です。売却するには結局、名義を移す登記まで進める必要があります。
放置している間も、家は待ってくれません
登記が止まっている間も、その家の固定資産税は毎年かかります。誰も住んでいなくても、庭木は伸び、雨漏りは進み、台風のたびに瓦が心配になります。名義が祖父のままでも、実際に管理の負担を負うのは、近くに住んでいる相続人の誰かです。
建物が傷んで危険な状態になると、行政から指導を受けることもあります(空き家を放置したときの税金とリスクの記事)。遠方にお住まいで手が回らない場合の管理については、空き家の管理の記事でお話ししています。

相続人が増えるほど、費用を誰が出すか、誰が見に行くかも決まりにくくなります。「そのうち話し合おう」で置いておくと、次の相続でまた人数が増える——数次相続がやっかいなのは、放っておくと状況が悪くなる一方だという点です。
登記は一件でまとめられる場合があります
数次相続では、条件を満たせば途中の代の登記を省いて、まとめて申請できる場合があります。祖父から父へ、父から自分へ、と2回登記するのではなく、祖父から直接自分へ移す形です。登記の費用も手間も、その分軽くなります。
条件というのは、途中の代の相続人が1人だけになっている場合など、登記の実務で決まっているものです。当てはまるかどうかは、集めた戸籍と遺産分割の内容を見て司法書士が判断します。ご自身で見分ける必要はありません。相談の際に「まとめて申請できますか」と一言聞いていただければ、司法書士が確認してくれます。
当社にできること・司法書士にお願いすること
ここからは、当社の進め方の話です。どこまでが当社の役目かを、はっきりさせておきます。
登記をきれいにする部分は、司法書士にお任せします。数次相続のご相談をいただいたら、まず当社から司法書士のご紹介を提案します。ご了解いただければおつなぎして、そのあとは司法書士とご相談者の間で進めていただく形です。戸籍集めは、ご自身で取られる方もいれば、司法書士に任せる方もいらっしゃいます。遺産分割協議書の作成は、司法書士が行います。
査定は、名義がまだそのままの段階でもお受けします。「いくらくらいになるのか分からないと、親族に話も持ちかけられない」というお気持ちはよく分かります。金額の見当が付いていたほうが、話し合いは進めやすくなります。

一方で、買主さま探しは、登記が終わってからにさせていただくことが多いです。相続の話がまとまるかどうか分からない段階で買主さまを探すと、買主さまにも売主さまにもご迷惑がかかるからです。当社が直接買い取る場合も同じで、金額をご提示したうえで、登記が完了してからのお取引になります。名義が動かせない状態では、そもそも売買ができません。
そして、相続人の間で話がまとまらず、争いになってしまうこともあります。当社のお客さまでそうなった例はありませんが、同業の間では耳にします。こうしたときに当社が間に入って話をまとめることは、法律上できません。弁護士にご相談いただくことになります。当社がお手伝いするのは、話がまとまってからの売却です。
まとめ
数次相続は、相続が終わらないうちに次の相続が起きて、関わる人が増えていった状態です。代襲相続とは亡くなった順番が違い、誰が相続人になるかも変わります。放置するほど相続人は増え、2027年3月末という登記の期限も迫っています。
やることの順番は、戸籍で相続人を確定する→遺産分割の話し合い→相続登記→売却。当社は司法書士のご紹介と、話し合いの材料になる査定でお手伝いし、買主さま探しは名義が整ってからお引き受けします。
「名義が祖父のままだった」「相続人が何人いるのか分からない」という段階からで構いません。まだ売ると決めていない、査定だけ、という段階のご相談でも構いません。お気軽にどうぞ。
ご確認ください
この記事の記載は執筆時点のものです。記事中のモデルケースは、相続人の増え方を分かりやすくお伝えするための架空の設定で、実在の取引ではありません。誰が相続人になるか、登記をまとめて申請できるかは、戸籍の内容と個別の事情によって変わります。相続登記の手続きは司法書士、相続人間の争いに関わる問題は弁護士の業務です。制度の内容は法務省のページでご確認ください。当社の進め方に関する記載は当社の場合であり、他社と異なる場合があります。記事中の画像はイメージです。
よくある質問
数次相続とは何ですか?
ある人が亡くなって相続が始まったあと、遺産分割や相続登記が済まないうちに、その相続人も亡くなってしまった状態です。相続が重なるため、遺産分割の話し合いに加わる相続人が増えていきます。
代襲相続とは何が違うのですか?
亡くなった順番が違います。相続が始まる前に子が亡くなっていれば代襲相続で、孫が代わりに相続人になります(民法887条2項)。相続が始まった後に相続人が亡くなれば数次相続です。順番によって誰が相続人になるかが変わるため、戸籍での確認が必要です。
祖父名義のままの家です。今からでも登記しないとだめですか?
2024年4月から相続登記の申請は義務になっており、義務化より前に起きた相続も対象です。この場合の期限は2027年3月31日とされています。正当な理由がなく申請しない場合、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。
相続人が多くて話し合いがまとまりません。売れませんか?
名義が動かせない状態では売買ができないため、まず相続登記まで進める必要があります。当社は司法書士をご紹介し、話し合いの材料になる査定はお受けしますが、相続人の間で争いになっている場合は弁護士にご相談いただくことになります。
登記が終わる前に、査定だけしてもらえますか?
お受けしています。金額の見当が付いていたほうが親族との話し合いを進めやすいためです。ただし買主さま探しは、話がまとまるかどうかによって買主さまにもご迷惑がかかるため、登記が完了してからにさせていただくことが多いです。
登記を2回しないといけませんか? 費用が心配です。
途中の代の相続人が1人だけになっている場合など、条件を満たせば、途中の登記を省いてまとめて申請できる場合があります。使えるかどうかは戸籍と遺産分割の内容によりますので、司法書士にご確認ください。
「売るかどうか迷っている段階」でも大丈夫です。買取と仲介、どちらで進めた場合の金額も比べられます。他社で断られた物件のご相談も歓迎です。
