家賃滞納者がいる物件は売れる?明渡し前と後で変わる3つの売り方|貸主として明渡訴訟を経験した会社が解説
毎月きちんと入っていた家賃が、ある月からぱたりと止まる。賃貸物件を持つ方にとって、これほど落ち着かない出来事はありません。連絡してもはっきりした返事がなく、滞納の月数だけが増えていく。「この物件、もう手放したい。でも滞納者がいるのに売れるのか?」と考え始めた方に向けて、この記事を書いています。
滞納者がいる物件にも、売却の方法はあります。入居者がいるまま売る(オーナーチェンジ)、明渡しを済ませてから売る、不動産会社に買い取ってもらう、の3つです。どれを選ぶかで、売却までにかかる時間も、売れる金額も変わります。
なお、明渡訴訟から強制執行までの実際の流れと費用は、当社が自社物件で経験した記録で詳しく書いています。
実は私たちNextHomeは、不動産会社であると同時に、貸主の立場で家賃滞納に直面し、明渡訴訟から強制執行までの一連の手続きを経験した当事者でもあります。机上の解説ではなく、その経験を踏まえた現実的な話を整理します。
※本記事に登場する事例は、当社が貸主として実際に経験した内容をもとに、個人が特定されないよう一部内容を変更しています。
家賃滞納者がいる物件でも、売却できる?

できます。所有者が物件を売ること自体に、入居者の同意は必要ありません(賃貸借契約は新しい所有者に引き継がれます)。売れないのではなく、「誰に・どういう状態で売るか」の選択肢が通常の物件と変わる、というのが正確なところです。
押さえておきたい前提が2つあります。
- 滞納の事実は、買主に伝える必要がある:家賃の滞納状況は、買主の判断に大きく影響する事項です。隠して売ることはできませんし、隠せば後のトラブルの原因になります
- 入居者の権利は法律で守られている:家賃を滞納していても、貸主が勝手に鍵を替えたり、荷物を運び出したりすることはできません。退去を実現するには、法律に沿った手続き(交渉・訴訟・強制執行)が必要です
この2つの前提の上に、3つの売り方があります。
売却方法は、明渡し前に売る・明渡し後に売る・買取の3つ

方法① 入居者がいるまま売る(オーナーチェンジ)
賃貸中の物件を、貸主の地位ごと買主に引き継ぐ売り方です。買主は主に、収益物件を探している投資家や事業者になります。
向いているのは、「手間と時間をかけずに手放したい」場合です。明渡しの手続きをせずに売れるため、精神的な負担から早く解放されます。一方で、滞納中の物件は「家賃収入が入っていない収益物件」ですから、購入を考える方は限られ、価格も通常のオーナーチェンジ物件より下がります。滞納の経緯・督促の記録・契約書がきちんと揃っているほど、買主は検討しやすくなります。
方法② 明渡しを済ませてから売る
入居者に退去してもらい、空室にしてから売る方法です。空室になれば、投資家だけでなく「自分で住みたい人」にも売れるようになり、購入を考える方の幅が広がります。リフォームして売る、そのまま売るなど、売り方の自由度も上がります。
ただし、滞納者の退去は簡単ではありません。話し合いで解決すればよいですが、応じてもらえない場合は、契約解除の通知、明渡しを求める訴訟、それでも退去しない場合の強制執行と、法律に沿った手続きを踏むことになります。時間は数か月単位、費用も訴訟・執行・残置物の処理などを合わせると決して小さくありません。その負担と、空室で売れることによる価格の上昇分を天秤にかけて判断します。
方法③ 買取を利用する
滞納者がいる状態のまま、訳あり物件を扱う不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。金額は仲介で売る場合より下がりますが、明渡しの問題を自分で抱え続けなくてよいのが最大の利点です。「裁判までは踏み切れない」「遠方で対応できない」「相続したがどうしていいか分からない」という場合の現実的な方法になります。
買取と仲介の仕組みの違いは買取と仲介どっちが得?で詳しく解説しています。
売却前に確認したいポイント
どの方法を選ぶにしても、次の資料と情報を確認しておくと、話が早く、正確になります。
- 賃貸借契約書:契約条件・連帯保証人の有無は、売却価格にも明渡しの進め方にも直結します
- 滞納の記録:いつから・いくら滞納しているか。通帳の入金履歴や管理会社の集金記録で整理します
- 督促の履歴:電話・手紙・内容証明郵便など、いつ・どんな形で支払いを求めたかの記録
- 入居者との連絡が取れるかどうか:連絡が取れる滞納と、行方が分からない滞納では、進め方が変わります
- 管理会社の有無:管理を任せている場合は、記録の整理と状況の把握を管理会社と一緒に行います
この整理は、オーナーチェンジで売る場合は「買主への説明資料」になり、明渡しを進める場合は「手続きの証拠」になります。どの道を選んでも無駄になりません。
オーナーチェンジで売るとき、買主は何を見る?
入居者付きのまま売る場合、買主(投資家や事業者)が確認するのは、おおむね次の点です。売る側があらかじめ整理しておくと、価格交渉で不利になりにくくなります。
- 賃貸借契約の内容:家賃・契約期間・敷金の扱い。契約書がない「口約束の賃貸」は大きなマイナスになるため、その場合は正直に伝えたうえで売り方を工夫します
- 滞納の経緯と記録:単発の遅れなのか、長期の滞納なのか。督促にどう反応しているか。記録が整理されているほど、買主はリスクを見積もりやすく、検討から降りにくくなります
- 保証会社・連帯保証人の有無:家賃保証会社の契約があれば、滞納家賃の回収や明渡し手続きの負担が変わるため、買主にとって大事な情報です
- 建物の状態:入居中は室内が確認できないことが多いため、外観・共用部・過去の修繕履歴が判断材料になります
つまり、オーナーチェンジの売却は「物件」と「契約と記録」のセット販売です。書類の整理がそのまま価格に響く、と考えてください。
滞納が始まったばかりなら、売る前にできること
もし滞納がまだ始まったばかりの段階でこの記事を読んでいるなら、売却の検討と並行して、次のことを今日から始めてください。
- 記録を取り始める:いつ・いくら入金がなかったか、いつ・どんな方法で連絡したか。メモで構いません。後々どの道を選んでも、この記録が効いてきます
- 保証会社の契約を確認する:家賃保証に入っていれば、滞納時の連絡先と手続きが決まっています。連絡が遅れるほど選択肢が減ります
- 管理会社と状況を共有する:管理を任せている場合は、督促の状況と記録を確認します
- 放置しない:滞納は時間が経つほど金額が膨らみ、解決の費用も手間も増えます。当社の経験からも、「早く動き始めた分だけ、あとが楽になる」のは間違いありません
実際に経験した、明渡訴訟の流れ

ここからは、当社が貸主の立場で経験した明渡しまでの流れを、裁判所で進める手続きの順に沿ってご紹介します(前述のとおり、個人が特定されないよう一部内容を変更しています)。
- 支払いのお願いと記録:滞納が始まった段階で、電話や書面で支払いをお願いし、そのやりとりを日付とともに記録しました。あとから振り返ると、この記録がすべての土台になりました
- 内容証明郵便による通知:支払いがされないまま滞納が続いたため、期限を定めて支払いを求め、期限までに支払いがなければ契約を解除する旨を内容証明郵便で通知しました
- 建物明渡しを求める訴訟の提起:それでも解決しなかったため、裁判所に建物明渡請求の訴訟を起こしました。訴訟は弁護士に依頼して進めることができ、当事者本人が手続きを行うことも制度上は可能です(裁判の流れは裁判所:民事訴訟で公開されています)
- 判決・強制執行:判決を得ても退去されない場合は、裁判所への申立てにより、執行官が関与する明渡しの強制執行という手続きに進みます(裁判所:不動産引渡(明渡)執行)。ここまで進むと、執行の費用や残置物の処理費用も貸主側の負担としてかかってきます
経験して分かったことを、感情を抜きにして3つだけ挙げます。
- 記録がすべて:「いつから・いくら・どう督促したか」が揃っていれば手続きは進み、揃っていなければ止まります
- 時間は思った以上にかかる:通知から明渡し完了まで、月単位ではなく年単位を覚悟する場面もあります。滞納の初期に動き始めるかどうかで、その後が大きく変わります
- 感情で動かない:腹が立つ場面はあります。それでも、法律の手続きから外れた行動(鍵の交換・無断での立ち入りなど)は、貸主側が不利になるだけでした。淡々と、手続きどおりに進めるのが結局いちばん早いです
大事な注意:入居者との明渡し交渉や訴訟を、貸主に代わって行えるのは弁護士だけです(法律で決まっています)。不動産会社である当社が、お客様の物件の明渡し交渉を代行することはできません。明渡しの手続きを進めたい場合は、弁護士への相談をおすすめします。当社がお手伝いできるのは、「その物件をどう売るか」の部分です。
結局、どの方法が向いている?
3つの方法を、状況別に整理します。
- 手間なく早く手放したい・裁判はしたくない → ①オーナーチェンジ か ③買取。滞納の記録を整理して、現状のまま売る道を探ります
- 時間をかけても手取りを増やしたい・滞納の証拠が揃っている → ②明渡し後の売却。弁護士に相談しながら明渡しを進め、空室にしてから売ります
- 遠方・相続などで対応が難しい → ③買取が現実的です。現地の対応も含めて手放せます
迷った場合は、①〜③それぞれの「手元に残る金額の見込み」と「かかる期間」を並べて比べることをおすすめします。当社では、オーナーチェンジで売った場合・明渡し後に売った場合・買取の場合の金額を並べてご提示できますので、比べてから決めてください。売却にかかる費用の全体像は家を売るときにかかる費用の一覧もあわせてどうぞ。
NextHomeの場合:貸主の悩みを、経験者として整理します
私たちNextHomeは、明石市・加古川市を中心に、家賃滞納中の物件を含む「普通には売りにくい」不動産のご相談を受けている会社です。他社で断られた物件のご相談も受け付けています(不動産屋に断られた家は売れない?)。
- 貸主として滞納・明渡し・強制執行を経験しているため、「今どの段階で、何がつらいか」を実感として理解したうえでお話を伺えます
- オーナーチェンジ・明渡し後の売却・買取のそれぞれの金額の見込みを並べてご提示します
- 明渡しの法的手続きが必要な場合は、弁護士への相談をおすすめし、当社は売却の部分をお手伝いします
- 滞納の記録の整理など、売却に向けた資料の準備からご一緒します
- 売らないという結論になっても構いません。しつこい営業はしません
ご相談前に、あると話が早いもの
全部そろっていなくても大丈夫です。まずはお手元にあるものだけご用意ください。
- 賃貸借契約書
- 家賃の入金が分かるもの(通帳・管理会社の明細など)
- 督促や通知の記録(内容証明の控えなど)
- 固定資産税の納税通知書
よくあるご質問
Q. 家賃を滞納している入居者がいたまま、本当に売れるのですか?
A. 売却は可能です。入居者付きのまま収益物件として売る方法(オーナーチェンジ)と、買取を利用する方法があります。ただし滞納の事実は買主に伝える必要があり、価格には影響します。
Q. 滞納の事実を伝えずに売ることはできませんか?
A. できません。滞納状況は買主の判断に重要な影響を与える事項で、隠して売ると後から責任を問われる原因になります。正確に開示したうえで、それを前提にした売り方を考えるのが安全です。
Q. 明渡しの交渉を、不動産会社にお願いできますか?
A. できません。入居者との明渡し交渉や訴訟を貸主に代わって行えるのは、法律上、弁護士だけです。明渡しを進めたい場合は弁護士への相談をおすすめします。当社がお手伝いできるのは売却の部分です。
Q. 明渡しをしてから売るのと、そのまま売るのと、どちらが得ですか?
A. 物件と状況によります。空室にすれば購入を考える方が広がり、価格は上がりやすい一方、明渡しには時間と費用がかかります。それぞれの売れる金額の見込みと期間を並べて比べてから決めることをおすすめします。
Q. 相続した物件に滞納者がいると分かりました。何から始めればいいですか?
A. まず賃貸借契約書と家賃の入金記録を確認し、滞納の状況を整理するところからです。資料がそろわない場合も、分かる範囲の情報で相談を始められます。
※本記事は、貸主の立場から見た情報の整理を目的としています。明渡しの可否や手続きに関する個別の判断は、弁護士など専門家への確認を前提にしています。滞納・明渡しに関する状況はケースごとに異なります。
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「売るかどうか迷っている段階」でも大丈夫です。買取と仲介、どちらで進めた場合の金額も比べられます。他社で断られた物件のご相談も歓迎です。
