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不動産の「囲い込み」とは——売主が損する仕組み

公開日:2026年8月4日 更新日:2026年8月7日

売却を任せているのに、内覧の連絡がなかなか来ない。報告はあっさりしている。この会社、本当に動いてくれているんだろうか——。そんな不安から調べるうちに、「囲い込み」という言葉にたどり着いた方も多いと思います。

囲い込みは、不動産業界の内側では昔から知られてきた問題です。そして2025年1月、国のルールが変わり、囲い込みにつながる行為は行政処分の対象になりました。この記事では、仲介と買取の両方をやってきた当社の目線で、囲い込みの仕組み、現場で実際に何が起きるのか、売主ができる確認の方法まで、踏み込んでお話しします。

不動産の「囲い込み」とは?

売却の依頼を受けた不動産会社が、他社から「その物件を買いたい方がいます」と紹介の連絡を受けても断ってしまい、自社だけで買主を見つけようとする行為です。囲い込みをする会社が売主にそれを伝えることはありませんから、売主は気づかないまま、買主候補を減らされていることになります。

なぜ起きるのか——仲介手数料の仕組み

理由は、仲介手数料の入り方にあります。仲介手数料は、売買がまとまったときに、売主と買主がそれぞれ自分側の仲介会社に支払うものです。ここで、1つの取引を1社が両方担当するか、2社で分担するかによって、会社の受け取りが変わります。

形 仕組み
片手(分かれ) 売主側の会社と買主側の会社が別。それぞれが自分の依頼者から手数料を受け取る
両手 1社が売主と買主の両方を担当し、双方から手数料を受け取る。会社の受け取りは片手の2倍になる

他社が買主を連れてくれば片手、自社で見つければ両手。ここに、「他社からの紹介を断りたい」という動機が生まれます。

ここで、はっきりさせておきたいことがあります。両手仲介そのものは、違法ではありません。自社に相談に来ている買主候補の中からその物件に合う方を見つけて、双方が納得してまとまるなら、それは正当な仕事です。問題は、両手にしたいがために、他社からの紹介を事実と違う理由で断ること。これが囲い込みです。

2枚の書類を並べて見比べる手元のイメージ

現場で何が起きるか——「商談中です」という断り

当社は買主側の仲介も行うので、他社が預かっている物件について「買いたい方がいるのでご紹介できますか」と問い合わせる側にもなります。電話をすると、「商談中です」「申込みが入っています」と断られる。ところが、その物件はその後も何週間も売りに出続けている——。業界の内側にいて、そういう経験は一度や二度ではありません。

もちろん、本当に商談中だった場合もあるでしょう。商談が流れることも普通にあります。ただ、他社からの問い合わせが来ていたことが売主に伝わっているのかどうかは、外からは分かりません。そして売主の側にも、それを知る手段が長い間ほとんどありませんでした。この見えにくさが、囲い込みの温床になってきました。

電話の受話器とメモ用紙が置かれた机のイメージ

売主は何を損するのか

まず、買主候補が減ります。候補が減れば、売れるまでの時間が延びます。そして時間が延びるほど、「そろそろ値下げを検討しませんか」という話になりやすくなります。売れないのが物件のせいなのか、売り方のせいなのか、売主の側からは見分けが付きません。売れない期間が続いたときの考え方は売れ残ったらどうなる?の記事でお話ししています。

もうひとつ、金額そのものの被害があります。架空の例でお見せします。3,000万円で売り出している家に、他社が「2,900万円なら買いたい」という買主候補を見つけてきたとします。一方、囲い込みをしている会社の手元にも、「2,800万円なら」という自社の買主候補がいる。売主にとっては、当然2,900万円の話を進めてほしい場面です。ところが囲い込みをする会社は、他社の2,900万円を断り、自社の2,800万円の買主候補へ話を持っていってしまうことがあります。

なぜそちらを選ぶのか。仲介手数料を上限(売買価格×3%+6万円、消費税10%込み)で計算すると、理由が見えます。

他社の買主候補で契約 自社の買主候補で契約
売買価格 2,900万円 2,800万円
売主が受け取る額 2,900万円 2,800万円(100万円少ない)
会社が受け取る手数料 片手 約102.3万円 両手 約198万円(ほぼ2倍)

売主は100万円損をしているのに、会社の受け取りはほぼ2倍に増える。売主にとって良いはずの話を、会社が自分の都合で断ってしまう。売主のいないところで決められてしまうことが、囲い込みのいちばんの害です。2,900万円の買主候補がいたことも、売主には伝わりません。この例は説明のための架空のモデルケースで、すべての両手仲介がこうなるという話ではありません。ただ、こういう構図が起こり得るからこそ、国はルールを変えてまで対策に動きました。

ルールはどう変わったか——2025年1月から行政処分の対象に

まず、もともとあるルールから。専任媒介契約・専属専任媒介契約で売却を任された会社は、レインズ(国が指定した流通機構が運営する、不動産会社間の物件情報ネットワーク)に物件を登録する義務があります(宅地建物取引業法34条の2)。専任は契約日から7日以内(休業日を除く)、専属専任は5日以内。登録したら、その証明として「登録証明書」を売主に渡すことも義務です。売却活動の報告も、専任は2週間に1回以上、専属専任は1週間に1回以上と決められています。

レインズの仕組み全体を先に知りたい方は、レインズとは?の記事をどうぞ。

2016年からは、レインズに「取引状況(ステータス)」の仕組みが加わりました。登録物件ごとに「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3つの状態を表示するもので、売主は、登録証明書に記載されたIDとパスワードで売主専用の確認画面にログインし、自分の物件の登録内容と取引状況をいつでも確かめられます(国土交通省・報道発表)。

そして2025年1月です。宅建業法の施行規則が改正され(2024年6月公布)、この取引状況の登録が義務になったうえ、事実と異なる登録をした場合は、宅建業法に基づく指示処分の対象になることが明確になりました。購入の申込みが入っていないのに「申込みあり」として他社の紹介を止めるような行為に、国が正面から対策に動いた形です。あわせて、登録証明書には二次元コードが付き、スマートフォンで読み取るだけで確認画面を開けるようになりました(国土交通省・ステータス管理機能の案内)。

売主ができる確認は?

4つあります。どれも難しくありません。

確認 内容
①登録証明書を受け取る 専任・専属専任なら交付は義務。渡されていないなら、まずそこから確認
②売主専用画面を見る 登録証明書のID・パスワード(または二次元コード)でログインし、取引状況を確認。心当たりのない「一時紹介停止中」や「申込みあり」になっていたら、理由を聞く
③報告書を読む 問い合わせの件数、他社からの紹介の有無が書かれているか。書かれていなければ聞く
④口頭で質問する 「他社さんからの問い合わせはありましたか」。この一言を売主が口にするだけで、かなりの抑止になります
書類とスマートフォンを見比べて確認する手元のイメージ

そもそもの契約の選び方から考えたい方は、専任・専属専任・一般の違いを媒介契約の記事でお話ししています。

当社の方針

「囲い込みはしません」と言葉で言うのは簡単です。だから当社は、確認できる形でお示しすることにしています。専任媒介・専属専任媒介では、法律の期限内にレインズへ登録し、登録証明書を必ずお渡しします。売却活動の報告も、決められた期間内に必ず行います。

そして、一般媒介でも、当社はレインズに登録します。一般媒介には登録の義務がありませんが、買主候補を増やすことが売主さまの利益になる以上、載せない理由がないからです。登録が何を意味するのかも、契約のときにご説明します。報告も、一般媒介だから何もしないということはなく、定期的に状況をお伝えしています。

他社からの紹介は歓迎です。買主がどこから来ても、良い条件で売れることが売主さまの利益であり、それをお手伝いするのが当社の仕事だからです。実際、「よそに任せているけれど、囲い込みされている気がする」というご相談をいただいたこともあります。今の契約の状況をうかがいながら、確認の仕方から順に見ていきますので、そうした段階のご相談でも構いません。なお、売却活動そのものに時間をかけられないご事情がある場合は、当社が直接買主になる買取という方法もあります(買取と仲介の違いの記事)。

ご相談の際は、今の媒介契約書や登録証明書、これまでの報告書があると、状況の確認が進めやすくなります。全部そろっていなくても大丈夫です。まずはお手元にあるものだけご用意ください。

まとめ

囲い込みは、仲介手数料の両手を狙って、他社からの買主紹介を事実と違う理由で断る行為です。売主は気づかないうちに、買主候補と時間、そして場合によっては売買価格まで失っていきます。2025年1月からは、レインズの取引状況に事実と異なる登録をすれば行政処分の対象になり、売主が確認できる仕組みも整いました。登録証明書を受け取る、売主専用画面を見る、報告書を読む、そして遠慮なく質問する。任せた会社の動きを確かめる方法は、もう売主の手の中にあります。ぜひ使ってください。

売却の進め方のご相談も、今の売却活動へのご不安も、お気軽にどうぞ。

ご確認ください

この記事の制度に関する記載は執筆時点のものです。本文中の現場の話は当社の経験に基づく一般的な説明で、特定の会社の行為を指すものではありません。金額の例は考え方を説明するための架空のモデルケースで、実在の取引ではなく、仲介手数料は法令上の上限額(消費税10%込み)で計算しています。両手仲介そのものは違法ではなく、問題となるのは事実と異なる対応で紹介を妨げる行為です。個別の契約の扱いや、囲い込みが疑われる場合のご相談は、契約先への確認のほか、都道府県の宅地建物取引業の担当窓口という相談先もあります。

よくある質問

不動産の囲い込みとは何ですか?

売却を任された不動産会社が、他社からの買主紹介を断って、自社だけで買主を見つけようとする行為です。売主と買主の両方から仲介手数料を受け取る「両手仲介」を狙って行われ、売主は気づかないまま買主候補を減らされます。

囲い込みは違法ですか?

両手仲介そのものは違法ではありません。ただし2025年1月から、レインズの取引状況に事実と異なる登録をすることは、宅建業法に基づく指示処分の対象になることが明確になりました。囲い込みにつながる虚偽の登録は、行政処分の対象です。

自分の物件が囲い込みされていないか、確認できますか?

専任媒介・専属専任媒介であれば、不動産会社から渡される登録証明書のID・パスワード(または二次元コード)で売主専用の確認画面にログインし、レインズの登録内容と取引状況を確認できます。あわせて、定期報告で他社からの問い合わせの有無を確認してください。

一般媒介なら囲い込みの心配はありませんか?

複数の会社に同時に任せられるので、1社に止められる形にはなりにくくなります。一方で、一般媒介にはレインズへの登録義務がなく、登録されないと買主候補への露出が減るという別の注意点があります。当社は一般媒介でもレインズに登録し、そのご説明もしています。

囲い込みされている気がします。どうすればいいですか?

報告書の内容と、売主専用画面の取引状況を確認したうえで、「他社からの問い合わせはありましたか」と担当者に聞いてみてください。説明に納得できない状態が続くなら、媒介契約の期間満了時に更新しないという選択もあります。他社の状況を踏まえたご相談も当社でお受けしています。

両手仲介の会社に任せると損をしますか?

そうとは限りません。自社の買主候補の中から良い条件の方を見つけてまとまるなら、売主にとっても悪い話ではありません。見るべきところは、他社からの紹介にもきちんと物件を開いているかどうか。レインズへの登録と取引状況、報告の中身で確認できます。

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「売るかどうか迷っている段階」でも大丈夫です。買取と仲介、どちらで進めた場合の金額も比べられます。他社で断られた物件のご相談も歓迎です。